いちご栽培において「クラウン(茎の基部)の温度」が収量と品質を大きく左右することは、ベテラン農家の間ではよく知られています。しかし、クラウン温度を適切にコントロールするための設備投資となると、ハードルが高いと感じている農家も多いのではないでしょうか。
そこで注目されているのが「井戸水の活用」です。地下水である井戸水は、年間を通じて約13〜16℃と安定した水温を保つという特性を持っています。この安定した水温を上手に使うことで、夏の高温ストレスと冬の凍結リスクの両方に対応できます。しかも、空調設備に比べて電気代が大幅に削減できる点も魅力です。
この記事では、いちご圃場の見学会で学んだ知見をもとに、井戸水を活用したクラウン温度制御の具体的な方法を詳しく解説します。
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クラウン温度管理がいちごに与える影響
「クラウン」とは、いちごの茎の基部にある生長点のことです。ここから葉・花茎・ランナーが伸び出すため、クラウンはいちごにとって最も重要な部位の一つです。このクラウンの温度が適切に保たれているかどうかが、株全体の生育を左右します。
高温ストレスがもたらす悪影響
夏場にクラウン温度が高くなりすぎると、以下のような問題が発生します。特に定植直後の夏〜秋にかけては注意が必要です。
| 問題 | メカニズム | 影響 |
|---|---|---|
| 花芽分化の遅れ | 高温が花芽を抑制する | 収穫開始時期が遅くなる |
| 根の活性低下 | 地温が高いと根が機能しにくい | 養水分の吸収が低下 |
| 株の萎れ | 蒸散過多・根の吸収不足 | 生育停止・枯死リスク |
| 病害発生 | 高温多湿で菌が繁殖しやすい | 根腐れ・炭疽病など |
低温ストレス(冬の凍結)のリスク
冬場にクラウン温度が氷点下になると、細胞内の水分が凍って細胞が破壊され、株が枯死します。特にハウスの端や換気口付近など、冷気が入りやすい場所にある株は凍害を受けやすいため注意が必要です。
「圃場見学会でクラウン温度の話を聞いたとき、『そこまで気にしていなかった』という農家が多かったのが印象的でした。葉の色や果実の状態ばかり気にしていて、足元のクラウンを見ていなかったという気づきは大きかったです。」
井戸水を活用するメリット
クラウン温度制御の手段としては、空調機器やヒートポンプなどもありますが、井戸水にはコスト面と安定性の面で大きな優位性があります。
年間を通じた温度の安定性
地下水の温度は、地表から数メートル以上の深さになると、外気温の影響をほとんど受けなくなります。日本の多くの地域では、井戸水の水温は年間を通じて13〜16℃程度で安定しています。
これは「夏には冷たく(外気より涼しい)、冬には温かい(氷点下にはならない)」という、いちごにとって理想的な特性を持っています。この特性を活かすことで、夏の冷却と冬の凍結防止の両方に対応できます。
ランニングコストの大幅削減
空調設備を使った温度制御は電気代が高くなります。一方、井戸水を使った冷却・保温は、ポンプを動かす電気代だけで済むため、ランニングコストを大幅に抑えられます。初期投資として井戸の掘削やポンプ設置にコストはかかりますが、長期的には回収できる可能性が高い設備投資です。
井戸水の活用には事前に確認すべき点があります:
・水量:必要な灌水量を年間通じて安定して確保できるか
・水質:pH・硬度・鉄分など、いちご栽培に適した水質かどうか(水質検査を推奨)
・法的な許可:地域によっては地下水の採取に届出・許可が必要な場合がある
これらを事前に調査してから導入を進めましょう。
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具体的なクラウン温度制御の方法
方法①:点滴灌水によるクラウン冷却・保温
最もシンプルかつ効果的な方法が、クラウン付近に設置した点滴チューブから井戸水を供給することです。夏場は冷たい井戸水がクラウン周囲の温度を下げ、冬場は13〜15℃の井戸水が凍結を防ぐ保温効果を発揮します。
点滴灌水の実施タイミングは、温度センサーと組み合わせた自動制御が理想です。「クラウン温度が25℃を超えたら通水開始」「外気温が3℃以下になったら凍結防止モードで通水」といった設定を自動で行うシステムを構築できれば、管理の手間を大幅に削減できます。
方法②:夏場の霧状散水による冷却
夏の定植直後や育苗期において、日中の気温が高くなる前(朝の早い時間帯)に井戸水を霧状に散布することで、クラウン周囲の気温を下げる効果があります。蒸発冷却の原理を使った方法で、比較的少ない水量でも効果が得られます。
ただし、夕方以降の散水は高湿度を招き病害リスクが高まるため、散水は日中の高温時間帯に限定し、日没前には乾燥させるよう心がけましょう。
方法③:冬場の凍結防止灌水
厳冬期に霜や氷点下の気温が予想される夜間・早朝には、井戸水(約13〜15℃)をクラウン周辺に流すことで凍結を防ぎます。水が凍結する際に放出する「凍結潜熱」も保温効果を助けます。
気温予報と連動した自動制御システムがあれば、凍結リスクがある日の深夜0時〜早朝6時に自動通水するように設定できます。
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自動灌水システムとの組み合わせ
センサー連動システムの構成
井戸水を使ったクラウン温度制御を自動化するための基本的な構成は以下の通りです。
① クラウン温度センサー:株の根元付近に設置し、リアルタイムでクラウン温度を測定
② 電磁弁:センサーからの信号で自動的に開閉し、井戸水の通水を制御
③ 制御ユニット:温度の上限・下限値を設定し、自動で電磁弁を操作
④ 点滴チューブ:各ベッドのクラウン付近に配管し、均一に水を供給
市販の農業用灌水制御システムにこれらの機能を持つものがあり、スマートフォンで遠隔監視・操作できるタイプも増えています。まずは温度センサーと電磁弁だけのシンプルな構成から始め、効果を確認してから拡張するアプローチが現実的です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 井戸水の水温は地域によって違いますか?
はい、地域・深度・季節によって若干異なります。一般的に、深さ10〜20m以上の地下水であれば年間変動が小さく、日本の多くの地域で13〜16℃程度です。地下水の温度はその地域の年平均気温に近い値になることが多いため、事前に自分の農地の井戸水温を測定しておくことをおすすめします。
Q2. 井戸がない場合、同様の効果を出す方法はありますか?
井戸がない場合、ヒートポンプや地中熱を利用した温度制御システムが代替手段になります。また、遮光資材や反射マルチを使って地表面の温度上昇を抑える方法も、高温ストレス軽減に一定の効果があります。完全な代替にはなりませんが、コスト的に現実的な選択肢として検討する価値があります。
Q3. 高設栽培でも井戸水によるクラウン温度制御は有効ですか?
有効です。高設栽培では培地の保温性が低く、外気温の影響を直接受けやすいため、むしろ土壌栽培より温度変動が大きいケースもあります。点滴チューブでクラウン付近に直接給水することで、培地温度の安定化が期待できます。ベッドの断熱も組み合わせるとさらに効果が高まります。
まとめ
井戸水を活用したクラウン温度制御のポイントをまとめます。
✅ クラウン温度の重要性:花芽分化・根の活性・凍結リスクに直結する最重要管理ポイント
✅ 井戸水の強み:年間13〜16℃と安定。夏は冷却・冬は凍結防止の両方に使える
✅ 点滴灌水が基本:クラウン付近への局所灌水が最も効率的な温度制御方法
✅ 夏場の散水:朝の早い時間帯に霧状散水し、蒸発冷却でクラウン温度を下げる
✅ 冬場の凍結防止:氷点下が予想される夜間に通水し、凍結から株を守る
✅ 自動化が効果的:センサー連動の自動灌水システムで管理の手間を減らす
✅ 導入前の確認:水量・水質・法的許可を事前に調査してから進める
井戸水という身近な資源を活用することで、コストを抑えながら効果的なクラウン温度管理が実現できます。まず自分の農地に井戸水が活用できる環境があるか確認してみましょう。
※この記事はAIを活用して執筆・修正しています。

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