「CO2発生装置を導入したいけど、コストが高くてなかなか踏み出せない」——多くのいちご農家が抱えているこの悩み、実はCO2発生装置なしでもできる工夫がいくつかあります。
冬のいちご栽培において、CO2不足は収量低下の「見えない原因」になっていることがあります。ハウスを閉め切った状態で光合成が活発になると、CO2濃度が急速に下がり、400ppm以下になることも珍しくありません。この状態では、いくら温度や水を管理しても光合成が抑制されてしまいます。
この記事では、CO2と光合成の基本的な関係から、土壌栽培・高設栽培それぞれのCO2事情の違い、そして発生装置なしでできる実践的な対策まで詳しく解説します。
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CO2と光合成の関係:なぜCO2が収量を左右するのか
植物の光合成は、光・水・CO2の三要素があって初めて成立します。光と水は比較的意識されますが、CO2はどうしても見落とされがちです。大気中のCO2濃度は約420ppmですが、ハウスを閉め切った状態でいちごが活発に光合成を行うと、このCO2が急速に消費されていきます。
CO2濃度と光合成速度の関係
研究によると、いちごの光合成速度はCO2濃度に強く依存しており、CO2濃度を高めるほど光合成量が増加します。ただし、ある程度以上になると飽和します。
| CO2濃度 | 光合成への影響 | 状態 |
|---|---|---|
| 400ppm以下 | 光合成が抑制される | 危険ゾーン(CO2飢餓) |
| 420ppm(大気) | 通常レベル | 最低限の光合成 |
| 600〜800ppm | 光合成が促進される | 目標ゾーン |
| 1,000ppm | 光合成速度がほぼ最大化 | 理想値(施用の上限目安) |
| 1,500ppm以上 | 効果が飽和、コスト無駄 | 過剰施用 |
特に冬の晴天時の午前中は、ハウスを閉め切った状態で光合成が急速に進み、CO2濃度が350ppm以下まで下がることがあります。この「CO2飢餓」状態では、光や温度がいくら整っていても収量が上がりません。
早朝のCO2濃度が高い理由
夜間、いちごは光合成をしない代わりに呼吸(CO2放出)を続けています。そのため、日の出前のハウス内CO2濃度は1,000〜1,500ppmまで上昇していることがあります。この「早朝の高CO2時間帯」を最大限に活用することが、発生装置なしでも光合成効率を上げる重要な戦略です。
「朝イチでハウスに入ると、CO2センサーが1,200ppmを指していることがあります。この時間帯はいちごが光合成のエンジンをフル回転させている時間。換気を少し遅らせるだけで、この高CO2を活用できると気づいてから、朝の管理の考え方が変わりました。」
土壌栽培と高設栽培のCO2事情の違い
CO2管理において、土壌栽培と高設栽培の間には大きな差があります。これを理解することが、高設栽培でのCO2対策を考える出発点になります。
土壌栽培:自然なCO2供給がある
土壌栽培では、土の中の微生物が有機物を分解する際にCO2を継続的に放出しています。これが「土壌呼吸」と呼ばれる現象で、土壌が豊かであればあるほどCO2の自然供給量が多くなります。かつてのいちご栽培がすべて土壌栽培だった時代は、CO2発生装置がなくてもCO2飢餓が起きにくい環境が自然に整っていました。
また、土壌栽培では地温が安定しやすく、根圏の温度が維持されることで株全体の活性が高まる利点もあります。
高設栽培:CO2供給がほぼゼロ
高設栽培では、床面にセメントや防草シートが敷かれているため、土壌呼吸によるCO2発生がほとんどありません。さらに、培地(ヤシ殻・ロックウールなど)には有機物が少なく、微生物による分解も期待できません。
高設栽培が普及するにつれて「昔より収量や味が落ちた」と感じる農家が増えたという話を聞くことがあります。その原因の一つがCO2不足です。作業性・衛生面・腰への負担軽減など高設栽培の恩恵は大きいですが、CO2管理という新たな課題もセットでついてきます。この認識があるかどうかで、対策の有無が変わってきます。
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CO2発生装置なしでできる実践的な対策
CO2発生装置は効果的ですが、導入コストがかかります。まずは装置なしでできる工夫から始めましょう。
対策①:換気タイミングの最適化
最も手軽で効果的な対策が「換気タイミングの調整」です。早朝に蓄積した高CO2空気をできるだけ長くハウス内に留め、光合成に活用することがポイントです。
換気を開始する基準は「気温が上がったとき」と「CO2濃度が400ppm以下に下がったとき」の2つです。CO2センサーがあれば、400ppmを下回り始めたタイミングで換気を開始することで、CO2飢餓を回避しながら高CO2時間帯を最大限に使えます。
対策②:有機物の活用(土壌栽培・一部高設)
土壌栽培であれば、堆肥や有機物を十分に施用することで土壌微生物を活性化し、CO2の自然発生を促すことができます。高設栽培でも、培地に有機物を一部混合することで同様の効果が得られる場合があります。
対策③:電照・ジベレリン処理との組み合わせ
電照栽培では夜間も植物が活動するため、光合成時間が延び、相対的にCO2の利用効率が高まります。また、ジベレリン処理で株の活性を高めることも、CO2の効果的な活用につながります。これらを組み合わせることで、CO2発生装置がなくても光合成量を底上げすることが可能です。
対策④:CO2発生装置の段階的導入
上記の対策を実施しながら、CO2センサーでデータを取り、実際にCO2濃度が低下している時間帯・量を把握することで、発生装置導入の費用対効果を判断しやすくなります。「CO2不足があることを確認してから投資する」という段階的なアプローチが現実的です。
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よくある質問(Q&A)
Q1. CO2センサーはどんなものを選べばいいですか?
農業用途ではNDIR方式(非分散型赤外線)のセンサーが精度が高くおすすめです。価格帯は1〜5万円程度のものから農業用に特化した高機能タイプまで様々です。まずは手持ち型の測定器で自分のハウスのCO2推移を記録してみることから始めると、設置場所や管理方法のイメージが掴みやすくなります。
Q2. CO2を増やすと病害が増えるという話を聞きましたが本当ですか?
CO2濃度自体が病害を増やすわけではありません。ただし、CO2施用のためにハウスを閉め切る時間が長くなると、湿度が上がりすぎて病害リスクが高まることがあります。湿度管理と換気タイミングをセットで考えることが重要です。CO2と湿度のバランスを取ることが、実際の現場での課題です。
Q3. 土壌栽培から高設栽培に切り替えたら収量が落ちました。CO2が原因ですか?
CO2が原因の一つである可能性は十分あります。ただし、根温度の変化、培地の違いによる根の張り方、水管理の難易度の変化なども複合的に影響します。まずCO2センサーで確認し、午前中に400ppm以下になっているようであれば、CO2対策を優先的に検討してください。それ以外の要因は、根の状態や葉の色などを観察しながら絞り込んでいきましょう。
まとめ
いちご栽培におけるCO2管理のポイントをまとめます。
✅ CO2飢餓に注意:晴天の午前中、ハウス内のCO2が400ppm以下になると光合成が制限される
✅ 目標CO2濃度:600〜1,000ppmが理想。1,000ppm超は効果が飽和してコスト無駄になる
✅ 早朝の高CO2を活用:夜間の呼吸でCO2が蓄積する早朝の時間帯を光合成に最大限使う
✅ 換気タイミングの見直し:「気温上昇」と「CO2低下」の2基準で換気を判断する
✅ 高設栽培はCO2供給がゼロ:土壌と違いCO2の自然発生がないため意識的な対策が必要
✅ まずはセンサーで実態把握:データを取ってから発生装置の導入可否を判断するのが合理的
✅ 電照・有機物活用も有効:発生装置なしでも、換気最適化と組み合わせで改善できる
CO2管理は目に見えないだけに後回しにされがちですが、確実に収量に影響します。まずは自分のハウスのCO2濃度を測定することから始めてみましょう。
この記事はAI(Claude)の支援で作成し、農家本人(丹羽)が内容を確認・監修しています。

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