いちごの育苗をしていると、夏になると苗がどんどん弱っていくことがあります。葉が枯れたり、株元が黒ずんだりして「何がいけないのだろう」と悩んだ経験はないでしょうか。原因のひとつとして真っ先に疑ってほしいのが「炭疽病(たんそびょう)」です。
私は埼玉県吉見町でいちごを育てています。以前は毎年のように炭疽病が発生し、定植後に苗を植え替えることが何度も続きました。しかし育苗の管理方法を見直してからは、発生が大きく減り、今シーズンは育苗ハウスの苗の状態が格段に安定しています。
この記事では、炭疽病の症状・私のハウスで発生していた原因・実際にやった対策を順番にお伝えします。「いちごを育てたいけど病気が心配」という方にも、参考になる内容を心がけました。
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いちごの炭疽病とは?育苗期に特に注意が必要な理由
炭疽病は夏の高温多湿の時期に発生しやすく、育苗中の苗に大きなダメージを与える病気です。
いちごの炭疽病は「コレトトリカム属」というカビの仲間が引き起こす病気です。難しい名前ですが、カビによる感染症と思ってもらえれば大丈夫です。感染した苗は多くの場合、回復が難しく、そのまま枯れてしまいます。育苗期に広がると大量の苗を失う可能性があるため、早期発見・早期対応がとても大切です。
炭疽病が特に怖いのは、感染した苗が定植後に症状を出すことがある点です。見た目は元気そうでも、内部に菌が潜んでいることがあります。「定植したのに何株も枯れてしまった」という場合、炭疽病が育苗期に感染していた可能性があります。
炭疽病の主な症状
クラウン(株の根元中央)の変色や黒い斑点が、最初に気づくサインです。
炭疽病でよく見られる症状は以下のとおりです。
- クラウン(株の中心部・根元)が黒〜茶色に変色する
- ランナー(親株からのびるつる)に黒〜褐色の楕円形の斑点が出る
- 葉が枯れてきて、株を引っ張ると根元からすっと抜けてしまう
- 葉に水が染みたような小さな黒い斑点が出ることもある
症状が表に出た頃には、すでに株の内部まで菌が進んでいることが多いです。「葉が少し枯れてきたな」と気づいた時点で、クラウン部分を確認してみてください。
私のハウスでは「これは炭疽病なのか疫病(えきびょう)なのかよくわからない」という状態の苗が何株も出ていた時期がありました。疫病も似たような症状が出るため、初めて見ると判断が難しいことがあります。ただ、どちらの場合も「変だな」と思ったら早めに隔離する対応は同じです。
なぜ夏の育苗期に多発するのか
炭疽病の菌は気温25〜30℃・高湿度の環境でもっとも活発に増えるため、ちょうど夏の育苗期が要注意の時期にあたります。
いちごの育苗は一般的に6月〜9月頃にかけて行います。親株からランナーを伸ばして子苗を作るこの時期は、まさに炭疽病の菌が増えやすい高温多湿の季節と重なります。雨や水やりで水しぶきが飛ぶと、菌が近くの苗にも飛んで広がります。育苗中は苗を密集させることが多いため、一か所で発病すると一気に広がる危険があります。
夏の育苗は「暑さとの戦い」であると同時に「病気との戦い」でもあります。ハウス管理と水やり方法の見直しが、炭疽病予防の大きな鍵になります。
私のハウスで毎年炭疽病が出ていた原因
毎年のように炭疽病が出ていた頃、振り返ってみると原因はいくつも見つかりました。
育苗ハウスのビニールに穴が空いていた
ビニールハウスの小さな穴が、外からの雨を引き込む侵入口になっていました。
ある夏に育苗ハウスをよく確認したら、ビニールに穴が空いているのに気づきました。小さな穴だったので「大して問題ないだろう」と放置していたのですが、雨が降るたびにそこから水が入り込み、ハウス内の苗に雨水がかかっていたのです。
炭疽病の菌は雨水に乗って運ばれてきます。外から菌が運ばれてくるルートが、ずっとハウスの中に開いていたわけです。こういった小さな見落としが毎年の発生につながっていたと気づいたとき、正直「しまった」と思いました。自分では管理しているつもりでも、ハウスの状態を定期的に確認する習慣がなかったことが問題でした。
今は育苗前にハウス全体をひと通り点検して、穴や裂け目があれば補修テープで塞ぐようにしています。劣化が進んでいる箇所はビニールごと張り替えるなど、シーズン前の準備として組み込むようにしました。
地面に苗を置き、頭上から水をかけていた
頭上からの水やりと地面への直置きが重なって、菌を広げる環境を自分でつくり出していました。
育苗中に上からジョウロやスプリンクラーで水をかける方法を「頭上冠水(ずじょうかんすい)」と言います。水が苗全体にかかるため、水しぶきとともに菌が周囲に飛び散ります。感染した苗が1株あっただけで、水やりのたびに菌を「まき散らしていた」ようなものです。
さらに、苗を地面に直接並べていたことで、雨や水やりのたびに土の跳ね返りが苗にかかっていました。土の中には様々な菌がいるため、これが感染のルートになっていた可能性があります。地面への直置きと頭上冠水が重なって、炭疽病が発生しやすい状況をずっと作り続けていたわけです。
実際にやった4つの対策
原因がわかったうえで、翌年から以下の4つの対策を組み合わせて実施しました。
| 対策 | ポイント |
|---|---|
| ①発病株の隔離 | 見つけたらすぐに周りの苗から離す |
| ②農薬散布 | 炭疽病に適用のある薬剤を使う |
| ③棚の上に苗を置く | 地面からの跳ね返りと土壌菌を遮断する |
| ④底面給水へ切り替える | 葉・茎を濡らさず水しぶきによる拡散を防ぐ |
①発病した株はすぐに隔離・農薬を使う
感染が疑われる苗はすぐに周りの苗から離すことが、拡大防止の第一歩です。
発病が疑われる苗を見つけたら、まず隔離します。水やりや接触で周囲に広がるため、「様子を見よう」と放置するのは避けてください。回復が難しい場合は、処分することも必要です。「もったいない」という気持ちはわかりますが、健康な苗を守るために決断することが現実的な判断です。
農薬については、炭疽病に適用のある薬剤を使うことで感染の拡大を抑えられます。使用する際は、ラベルに記載されている使用量・回数を必ず守ってください。家庭菜園で使う場合は、家庭菜園向けに登録されている薬剤を選んでください。農協や園芸店のスタッフに相談すると、状況に合ったものを教えてもらえます。
②苗を棚の上に置き、底面給水に切り替える
苗を棚の上に置いて底面給水に切り替えることが、一番効果を感じた対策です。
まず、苗を地面に直接置くのをやめて、棚や台の上に置くようにしました。地面からの跳ね返りを防ぐだけでなく、風の通りもよくなり、苗の蒸れを防ぐ効果もあります。市販の育苗棚でも、ホームセンターで売っているメッシュの棚台でも構いません。地面から浮かせることが大切です。
次に、水やりの方法を頭上冠水から「底面給水(ていめんきゅうすい)」に切り替えました。底面給水とは、トレーや容器に水を張り、苗ポットの底から水を吸い上げさせる方法です。葉や茎が濡れないため、水しぶきによる菌の飛散が起こりません。また根が水を求めて下に伸びるため、根張りがよくなるという利点もあります。
底面給水は最初「手間がかかりそう」と思っていました。ところが実際にやってみると、トレーに水を張っておけばあとは苗が自分で吸い上げてくれるため、むしろ管理がシンプルになりました。水を与えすぎて根腐れを起こすリスクも減り、今では底面給水なしには戻れないくらい気に入っています。
底面給水に変えてから発生が大きく減った
底面給水への切り替えが、炭疽病の発生を抑える一番の転機になりました。
毎年出ていた炭疽病がほとんど出なくなった
切り替えてから炭疽病の発生数が目に見えて減り、苗の状態が明らかに安定しました。
底面給水に変えてから、炭疽病と思われる苗がほとんど出なくなりました。それ以前は毎年のように苗が弱っていたのに、切り替えてからは格段に少なくなっています。
「炭疽病なのか疫病なのかよくわからない」という状態で何株も弱っていた頃と比べると、今シーズンの育苗ハウスは別物です。病名の判断が難しいような苗が出ること自体がほとんどなくなり、苗の状態が全体的に揃うようになりました。どれかひとつの対策だけで変わったとは言い切れませんが、体感としては底面給水への切り替えが一番大きかったと感じています。
定植後の植え替えが減って、作業が安定した
育苗期に健康な苗を作ることで、定植後の手直し作業が大幅に減りました。
炭疽病などで弱った苗をそのまま定植すると、畑に植えてから枯れてしまうことがあります。そうなると植え替えが必要になり、時間と手間がかかります。以前は定植後に何株も植え替えることが当たり前になっていました。
対策を実施した今シーズンは、定植後の植え替えの数が大きく減りました。育苗段階でしっかり管理することが、定植後の安定した生育につながると実感しています。逆に言えば、定植後に苗が次々と枯れる場合は、育苗期の管理に見直しの余地があるかもしれません。
おすすめ資材・商品
私が実際に使っているおすすめ資材はこちらです。
まとめ
いちごの炭疽病は夏の育苗期に発生しやすく、放置すると苗全体に広がるやっかいな病気です。しかし原因を理解して対策を組み合わせることで、発生を大きく抑えることができます。
私の経験からポイントをまとめると、以下の4点です。
- 育苗ハウスの穴や劣化をシーズン前に確認・補修する
- 発病株はすぐに隔離して拡散を防ぐ
- 苗を地面に直置きせず、棚の上で管理する
- 水やりを頭上冠水から底面給水に切り替える
なかでも「底面給水への切り替え」は、家庭菜園でも取り入れやすく、効果も実感しやすい方法です。すべてを一度に変えなくても、まず水やりの方法を見直すことから始めてみてください。毎年苗が弱って悩んでいる方に、少しでも参考になれば嬉しいです。

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