EV拡大の裏で進行する静かな戦争――肥料不足と日本農業の危機

※この記事は、客観的な視点から国際的なEV政策と農業資源の関係を解説するニュース解説記事です。

参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=CydEzCtesQ4

アイキャッチ:EVとリン資源をめぐる構造的リスク
目次

EVの普及とリン資源のひそかな関係

電気自動車(EV)は、カーボンニュートラル社会の象徴として世界中で急速に普及しています。特に中国では政府主導のもと、都市部を中心に数百万台規模のEVが走行しており、その規模とスピードは他国の追随を許さないものとなっています。

しかし、その裏側では新たな資源争奪戦が進行中です。EVの普及に伴い、バッテリーに不可欠な「リン酸鉄(LFP)バッテリー」の需要が急増。このLFPに使用されるリン(リン酸塩)は、実は農業肥料にも欠かせない重要な成分です。

図1:EV用バッテリーと肥料が奪い合うリン資源

農業を圧迫する資源の「静かな戦争」

特に深刻なのが、アフリカや東南アジアの発展途上国です。これらの国では、もともと資源へのアクセスが不安定なうえ、価格高騰によって肥料が手に入らなくなってきています。結果として作物の収穫量が減少し、食料不足のリスクが現実のものとなってきました。

図2:EV拡大がもたらすリン資源争奪と農業圧迫

この状況は、日本にとっても対岸の火事ではありません。日本の農業もまた、リンを含む輸入肥料に依存しており、価格の変動や供給不安の影響を受けやすい体制にあります。特に小規模農家では、肥料価格の上昇が経営を直撃します。

図3:リン不足によって農作物生産に深刻な影響

主要輸出国に集中するリン資源

図4:リン資源の主要輸出国とその位置関係

日本農業への深刻な影響

図5:日本の肥料価格(青棒)と農家数(赤線)の推移。農業への構造的影響が見える。

まとめ:EVと農業の未来をどう両立させるか

EVは確かに地球環境にとって重要なテクノロジーですが、その生産と普及が「農業」という人類の基盤を脅かしている側面も見逃せません。銃声も爆発音もない、しかし確実に農民たちの生活を破壊し、世界の食卓を揺るがす「静かな戦争」。

この構造を理解し、資源の適切な分配や技術の両立を模索することは、食料安全保障を守るうえで避けて通れない課題です。読者の皆さまには、環境と農業が背反しない未来を考えるきっかけとして、本記事をお届けしました。

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