9億円の税金、本当に大丈夫?いちご農家が見た“道の駅建設ラッシュ”の裏側

いちご農家が語る「道の駅新設報道」に思うこと

〜埼玉・吉見町から、同じ“農”を生業とする立場から見つめて〜

こんにちは。埼玉県吉見町でいちご農家を営んでおります「丹羽いちご園」の丹羽と申します。
ニュースで取り上げられた茨城県那珂市の「新たな道の駅建設計画」、皆さんはどう感じましたでしょうか。

私自身、同じ“農”に携わる者として、また観光農園として多くのお客様をお迎えしている立場から、このニュースには大いに考えさせられるものがありました。今回は、一個人のいちご農家としての視点から、感じたことを率直に綴ってみたいと思います。少し長くなりますが、最後までお付き合いいただければ嬉しいです。


目次

■「道の駅」は農家にとってチャンスかリスクか

今回、那珂市が総事業費30億円、そのうち9億6000万円もの税金を投入して道の駅を新設するという話題。ニュース内では「賛否両論」とまとめられていましたが、正直「それはそうだろう」と、まず思いました。

私たちのような農家にとって、道の駅というのは
「自分たちの農産物を地域外の人に知ってもらい、手に取ってもらえる大きなチャンス」
である反面、
「産地偽装や、外部仕入れに依存して地元農家が置き去りにされるリスク」
も大いに感じるからです。

実際、ニュースでも市民説明会で「農産物の供給が不安」という声が出ていたそうですね。市側は「6割は地元農家、4割は市場から仕入れ」と回答していましたが、ここに農家としての危機感を覚えます。

私もいちご狩りシーズンには、道の駅や直売所に少量ですが出荷することもあります。ですが、売り場に並ぶ商品すべてが「地元産」で埋まることはほとんどありません。むしろ県外産や市場仕入れ品が多く、結局「どこでも買えるもの」ばかりが並ぶことになっている売り場を、これまで何度も目にしてきました。

農家として本当に望むのは「地元産を大切に扱ってくれる売り場」です。しかし、利益や回転率を優先すれば、どうしても「仕入れで棚を埋める」という方向に流れてしまいがちです。これは経営的には理解できる部分もありますが、地元農家が期待しているのは、そういった「穴埋め売り場」ではありません。


■「売り場づくり」は本当に地元第一でできるのか

ニュースでは、那珂市の説明として「地元産物のPRをしたい」という話もありました。しかし、その“PR”が単なるスローガンになってしまっては意味がありません。

本当に地域農家と向き合うのであれば、例えば

  • 売り場の〇〇%は必ず地元農家優先
  • 契約農家を募り、しっかりサポート・育成する
  • 季節ごとに「那珂市特集」「生産者特集」などの企画を実施する
  • 産地や生産者を明確に表示し、顔が見える売り場にする

こういった具体的な取り組みが必要だと、私は感じます。
「カボチャや干し芋をPR」と言っても、それを“誰が、どれだけ、どうやって”作り、売り、届けるのか。ここまで踏み込んで初めて、地元のためになる道の駅になるのではないでしょうか。


■「観光地化」による期待と不安

ニュースでは「年間95万人利用」「経済効果11億円」と、非常に夢のある数字が掲げられていました。私も農園をやっている者として、そういった“人が集まる場所”への期待はよくわかります。

実際、うちもいちご狩りを始めてから「観光農園」という言葉の重みを実感しています。遠方からわざわざ吉見町に来てくださるお客様、いちごを通して地域を知ってくださるお客様、そういった出会いは本当に嬉しいものです。

ですが、そうした観光の「光」だけを見るのではなく、「影」も同時に考えなければならない、とも思います。

例えば、人が集まればゴミや騒音、交通渋滞の問題も出てきます。観光施設は華やかですが、周辺住民や農地への影響、農業用水や環境負荷への配慮は、案外後回しにされがちです。

吉見町でも、いちご観光が注目される一方で「観光農園ばかり優遇されて、普通に野菜を作っている農家が取り残されている」という声を耳にすることもあります。
那珂市でも、華やかな施設の裏で、地元農家や住民が「本当にこれで良かったのか」と感じることがないように、しっかり丁寧に説明と対話を重ねてほしいと強く思います。


■「30億円の使い道」は誰のためか

道の駅を作るのに30億円、そのうち約9億円を市民の税金で負担。これはやはり、簡単に「良いね」とは言えない規模です。

ニュースでも「福祉や公共交通に使った方が…」という市民の声が紹介されていましたが、私も正直その気持ちには共感します。高齢化が進む地方にとって、日々の暮らしを支えるインフラ整備や福祉サービスこそ、最優先ではないかという思いがあるからです。

もちろん、経済活性化や観光振興も大切です。でもそれは「暮らしが安定してこそ」だと私は思います。
いちご農家をやっていると、特に冬場は地域の高齢者の方々が散歩がてら立ち寄ってくださることがよくあります。
「今日は寒いね」「あんたのとこのいちごはうまいよ」
そんな何気ない会話を通して、地域の暮らしに根ざしてこそ“商売”は成り立つんだと感じるからです。

大規模な施設や観光地化だけに夢を見過ぎず、今ある暮らし、地域に根ざした小さな営みを守ること。そこにこそ、税金の使い道として本当に大事なものがあるのではないかと、農家として、いちご農園を営む一人として思います。


■最後に…「那珂市らしさ」をどう守り、育てるか

ニュースの最後に登場した専門家の方が「成功のポイントは、那珂市らしさの商品開発や売り場作り」と語っていたのが、とても印象的でした。

私は吉見町のいちご農家として「吉見町らしさ」「うちの園らしさ」を日々模索しながら、いちごを育て、お客様と向き合っています。
同じように、那珂市の道の駅も、単なる「通りすがりの休憩施設」ではなく、「那珂市ならではの魅力が詰まった場所」として本当に愛される施設になることを心から願います。

そのためには、行政だけでなく、地元農家、商工業者、住民、すべての人が「自分ごと」として関わることが大切だと思います。反対や不安の声を無視せず、一緒に考えて、一緒に作っていく。そういうプロセスこそが、最終的に「成功だったね」と言える未来につながるのではないでしょうか。

私も、いちご農家として、吉見町から那珂市のチャレンジを温かく、しかし真剣に見守っていきたいと思います。

長文に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

🔗 参考元リンクはこちら

https://news.yahoo.co.jp/articles/456bf937c8301ed8a4d7c446b2a88f22aa8daf95

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