台湾で2600円、日本では倍以上…誰が日本の米を食べにくくしたのか?

「日本の米が日本で高く、海外で安い」問題に想うこと

皆さん、こんにちは。
埼玉県吉見町でいちご農家を営んでおります、丹羽いちご園の丹羽です。

私の仕事は、毎年冬から春にかけて、大切に育てたいちごを皆さんに届けること。小さな町の、家族経営のいちご園ではありますが、日々「美味しい」の一言を目指して、一粒一粒手間ひまかけて育てています。

そんな私が、先日SNSで話題になっていた「台湾のコストコで売られている日本米が、日本よりはるかに安い」というニュースを目にして、どうしても感じたことを、農家の一人として、また一人の国民として、皆さんと共有したくて、今日こうして筆を取りました。


目次

日本のお米、台湾では2600円、日本では…?

皆さんも既にご覧になった方が多いかもしれません。
台湾のコストコで売られている「あきたうよりずっと安い価格です。

私も初めてこのニュースを見たとき、「え?どういうこと?」と目を疑いました。
私たち農家は、日々コストとにらめっこしながら生産を続けています。いちごも例外ではありません。資材費、燃料代、人件費、肥料代、水道光熱費…。年々上がる一方で、価格に転嫁できるかといえば、そう簡単な話ではありません。

「日本国内の農産物は高い」というイメージが、どんどん消費者の間に広がっているように思います。でも、台湾で安く売られている日本米を見て、多くの消費者が「なんで日本人だけが高いお米を食べなきゃいけないの?」と疑問を持つのも当然です。


補助金は農家に届かない?

ニュースの内容によれば、輸出業者には国から1俵4万円もの補助金が支払われるそうですが、そのお金は農家には渡らず、業者だけが潤う構造になっているとのこと。

…これ、実は私たち小さな農家からすれば「やっぱりな」と思わざるを得ない話です。

確かに、国や自治体の補助金や助成金の制度はいくつもあります。しかし、その多くは「書類作成」「申請要件」「事務手続き」が非常に煩雑で、正直なところ、私たちのような小規模農家には縁遠い話だったりします。
さらに、補助金が決まっても、現場の実態に即していなかったり、実際の手取り額が少なかったりするケースも少なくありません。

ニュースで語られていた「農家には届かず、輸出業者だけが得をする」という構造は、米だけの話ではなく、農業全体に共通する問題だと感じています。


海外に売る前に、国内の食卓を守ってほしい

「なぜ、国内に米が足りないと言われているのに、海外に安く売るのか?」

この疑問、私も強く感じました。
日本国内の農業生産者は、高齢化、後継者不足、コスト増、気候変動、あらゆるリスクにさらされています。それでも「日本の食を守りたい」という思いで、踏ん張ってきた人たちばかりです。

それなのに、国内では高くて手が出せない価格で流通させておきながら、海外では安く大量に売る。
「日本のお米は高級品だから仕方ない」と、消費者にあきらめさせる。
それで本当に日本の農業、食卓、そして日本の未来は守れるのでしょうか。

国産農産物を高級品として扱う方向へ進んでしまえば、いずれ「普通の人が気軽に食べられる日本の食材」はなくなってしまいます。
まるで、国産牛が「高級ステーキ店でしか食べられない特別な存在」になってしまったように、米もいちごも、他の野菜も、すべて「特別な日にしか買えないもの」になってしまうかもしれません。


いちご農家として、今思うこと

私たち丹羽いちご園では、できるだけ手の届きやすい価格で、皆さんに「もぎたてのいちご」を楽しんでもらいたいと考えて、いちご狩りを続けています。
でも、農業を続ける厳しさは年々増しており、「これ以上コストが上がったらどうなるだろう…」と不安を感じることもあります。

だからこそ、今回のニュースを他人事とは思えませんでした。

「農家が悪い」「業者が悪い」「政府が悪い」と、責任のなすり合いをしている場合ではありません。
大切なのは、日本の農産物を、日本の消費者が、普通に、美味しく、無理なく食べ続けられる環境をどう守るかだと思います。


政策への期待と、私たち消費者・農家ができること

まず、農水省にはしっかりとした調査と説明を求めたいです。
輸出業者にだけ利益が集中する仕組みが本当に国益にかなうのか、国民の納得を得られるのか、透明な説明責任を果たしてほしい。
そして、国内流通における価格の適正化、農家への適正な利益配分、そういった政策の見直しを本気で進めてほしいと願います。

一方で、私たち農家も、もっと消費者の皆さんに「農業のリアル」を伝える努力をしなければならないと感じています。
そして、消費者の皆さんにも、「安いもの」だけを求めるのではなく、「誰がどうやって作っているか」に目を向けてもらえるよう、情報を発信し続けたいと思います。


いちご狩りから伝えたい「つくる人と食べる人の距離感」

いちご狩りに来てくださるお客様から、よく「こんなに甘いんですね!」「自分で採ると美味しさ倍増ですね!」という声をいただきます。

そのたびに私は、「食べる人と作る人の距離が縮まった瞬間だな」と感じます。
スーパーに並ぶパック詰めのいちごでは伝えきれない、「育てる苦労」「味わう喜び」「季節の恵み」を、直接お客様に感じていただける機会だからです。

お米も同じだと思います。
誰がどうやって作っているのか。
どんな思いで届けているのか。
そこにもっと関心を持ってもらえたら、きっと「日本の米が高い」と一言で切り捨てるのではなく、「日本の米を守るために何ができるか」を一緒に考えてもらえるのではないでしょうか。

最後に

私たち農家は、決して「贅沢がしたい」とか「もっと儲けたい」とばかり考えているわけではありません。
ただ、「ちゃんと手間をかけて育てたものが、きちんと評価されて、正当に報われる」そんな、あたりまえのことを願っているだけです。

それは、農業に限った話ではありません。
一生懸命働く人が、ちゃんと報われる社会。
真面目に作られたものが、正当に評価され、必要としている人の手に届く社会。
そんな社会を私たちは子どもたちや次の世代に引き継いでいきたいのです。

日本の農業は今、大きな岐路に立たされています。
「高すぎて手が出せない国産品」になるか、「誰でも気軽に手に取れる日常の恵み」として残るか。
それを決めるのは、政治家でも大企業でもなく、私たち一人ひとりの「選択」だと思います。

安さだけを求める時代は、もう終わりにしなければなりません。
「誰が、どんな思いで、どうやって作っているのか」。
その背景にもっと関心を持ち、選び、応援すること。
それこそが、これからの日本の農業を救うカギだと、私は信じています。

私たち丹羽いちご園は、これからも「美味しいいちごを、気軽に楽しめる場所」であり続けたいと願っています。
それは、単なるレジャー施設としてではなく、「作る人」と「食べる人」が直接つながれる場所としての役割でもあります。

「誰が作っているのか」「どうやって育てているのか」「どんな思いで届けているのか」
それを知ることで、いちご一粒がもっと特別に感じられる。
そんな体験を、これからも一人でも多くの方に届けていきたいのです。

だからこそ、今回のニュースが、ただの「炎上ネタ」で終わるのではなく、
もっと多くの人が農業と向き合い、日本の食卓の未来を考えるきっかけになることを、いちご農家として心から願っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また、吉見町のいちご畑で、皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。

🔗 参考元動画はこちら(YouTube)

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