【苺農家目線】プロ農家さんの「いちご苗の増やし方」動画を観て感じたこと
こんにちは、埼玉でいちご狩り農園を営んでおります「丹羽いちご園」です。
さて、今回は「いちご苗の増やし方」について解説されていた動画を拝見し、プロの農家として感じたリアルな声をブログにまとめてみました。実際に苺を育て、いちご狩り体験を通して多くのお客様と触れ合っている立場から、素直な感想や、農家として大事にしている視点も交えつつ、お届けします。
「いちごの苗をどう増やすのか?」は農家の永遠のテーマ
今回の動画、非常に分かりやすく、家庭菜園の方にも優しく伝えてくれている内容で、とても好感を持ちました。
「親株からランナーを伸ばして苗を増やす」――これ、言葉にするとたったこれだけのことなんですが、実は苺農家にとって一年で一番重要で、一番神経を使う作業でもあります。
なぜなら「苗半作」と言われるほど、苗の出来がその年の苺の出来を左右するからです。
苗づくりに失敗した年は、どんなに後から管理を頑張っても、正直、納得のいく苺には育ちません。だから私たち農家は、毎年苗づくりの時期になると、目の色を変えて苗に向き合います。
「ランナー増殖」は苺農家の常識だけど…家庭菜園の方にも広まってほしい
苺の増やし方には、種から育てる方法とランナーから増やす方法の2種類がある、という説明。
このあたり、家庭菜園を始めたばかりの方や、いちご好きなお客様にも、もっと知ってほしい知識だと改めて感じました。
実際、お客様からも「いちごって種から育つんですよね?」なんて聞かれることがよくあります。
たしかに理屈ではそうなんですが、動画でも語られていた通り、種から育てると品種が安定しなかったり、先祖返りして全く違う苺ができてしまうことがあるんですよね。
毎年ランナーから自家増殖しています。苗屋さんから新しい苗を買うことももちろんありますが、やっぱり自分で大切に増やした苗は、愛着もありますし、育ちも違う気がします。
「特許品種」の話にドキッ
動画で触れられていた「品種特許」の話、これは本当に大切なことです。
実際、農家仲間でも、これを知らずにうっかり新しい品種を勝手に増やしてしまって、注意された…なんて話を聞いたこともあります。
特に最近は、メルカリなどのフリマアプリで、家庭菜園向けに簡単に苗が買えてしまいますよね。
それが実は特許品種だった…なんてことも。知らなかったでは済まされません。
農家だけでなく、家庭菜園を楽しむ方々にも、このルールをぜひ守っていただきたいと強く感じました。
動画でも言われていた通り、「名前を使ってはいけない」ルールもあるので、たとえ自家用に増やしても「○○風いちご」としてしか販売できないなど、農家側にも色々と制約があります。
「家庭菜園での実践方法」も親切で好感
家庭菜園でもプランターでそのままランナーを誘引して増やす方法、これは本当にその通り。
うちの農園でも、お客様向けに「家庭でのいちご栽培体験セット」を企画しているので、動画の説明はとても参考になりました。
特に、ランナー固定用の「オレンジピン」の紹介はありがたいですね。
うちでも使っていますが、Amazonやホームセンターで簡単に手に入るので、家庭菜園でもぜひ使ってほしいアイテムです。
「針金でもクリップでも代用OK」と、手軽に始められる工夫を紹介していた点も、さすがの視点だと感じました。
苗の数に驚き…でもその管理こそがプロ農家の腕の見せどころ
「1株から30~50株」
実際、秋姫や紅ほっぺなどランナーの多い品種だと、それくらい出るのは本当です。
ただ、ここで大事なのが「全てを育てるわけじゃない」ということ。
私たちプロ農家は、その中から「良さそうな苗」を厳選し、管理できる数だけ育てます。
全部育てようとすると、場所も手間もコストもかかり過ぎて、結局失敗することもありますからね。
家庭菜園の方は、ぜひ「数を増やすこと」が目的になりすぎず、「元気に育てられる数」に絞って楽しんでいただきたいです。
「太郎・次郎・三郎」の話は農家あるある
ランナーのつながりに「太郎・次郎・三郎」と名前がついている話、思わず「そうそう!」と笑ってしまいました。
うちでも農家仲間との会話で「今年は太郎飛ばす?」「次郎いい感じだったよ」なんて話をよくします。
動画で語られていた「成長差」「管理のしやすさ」の視点、非常に共感します。
大きさがバラバラになると、確かに育苗ハウス全体の環境管理が難しくなります。
だからこそ、太郎株を飛ばして次郎や三郎を使う、という選択肢も「あり」なんですよね。
でも、家庭菜園で少しだけ苗を増やしたい方なら、そこまで気にせず全部試してみるのもいいと思います。失敗を恐れず、まずはやってみる。それが家庭菜園の楽しさですから。
「遮光ネットや白黒マルチ」の工夫に共感
夏場の苗づくりで大敵となる「高温障害」「炭疽病(たんそびょう)」についても、しっかり触れられていて、これまたさすがの視点だと感じました。
うちでも5月~7月にかけては、遮光ネットを張って直射日光を和らげる工夫をしています。
動画で紹介されていた「白黒マルチ」は、実はうちでも導入しているアイテムの一つ。
これがあると、地温上昇を防いだり、光を反射させて葉裏の害虫対策にもなったり、意外と万能なんです。
もちろん、家庭菜園でそこまで本格的にやるのは難しいかもしれませんが、「日陰で作業する」「夕方や涼しい時間帯に管理する」といった小さな工夫だけでも、苗の出来は大きく変わってきます。
まとめ:苗づくりは「愛情」と「観察力」がすべて
今回の動画を拝見し、改めて痛感したのは、
「いちごの苗づくりは、決して作業ではなく“生き物との対話”そのものだ
ということでした。
いちごの苗は、ただ親株からランナーが出るのを待って、土に置くだけで勝手に育つ…
そんな甘いものではありません。
毎朝、葉の色、茎の張り、根の出具合、乾き具合、気温や湿度…。
一つ一つを目で見て、触れて、感じ取る。
ほんの少しの異変も見逃さず、「今日、何をしてあげるべきか?」を考え続ける。
これが、苗づくりの本質だと私は思います。
水をやりすぎてもダメ。足りなくてもダメ。
日当たりを良くしすぎても、陰にしすぎてもいけない。
「どうしたらこの子たちが一番元気になるのか?」
日々、苗一つひとつに向き合うその姿勢こそ、**「愛情」と「観察力」**なのです。
実際、苗づくりに成功すれば、その年のいちごは本当に力強く育ってくれます。
逆に、どれだけ大きく見えても、中身が弱い苗では、シーズン中に失速してしまう。
だからこそ、私たち苺農家は毎年、苗づくりに全力を注ぎ、そこに一番の緊張感を持って取り組んでいるのです。
苗づくりは「家庭菜園」でも味わえる本当の喜び
家庭菜園でも、この「愛情」と「観察力」の楽しさを、ぜひ味わってほしいと心から思います。
最初は小さなランナーを恐る恐る土に乗せてみるだけでも、きっとワクワクするはずです。
「根が出たかな?」「ちゃんと根付いたかな?」「葉っぱが元気かな?」
毎日見守るうちに、まるで子どもを育てるような愛着が湧いてくるはずです。
そして、季節が進み、ようやくその苗が立派に育ち、自分の手で摘み取る“その瞬間”。
家族や友人と一緒に「おいしいね」と笑い合える“その一粒”。
それは、スーパーで簡単に買えるいちごとは比べものにならない、特別な宝物になるはずです。
苗づくりは「ゴール」ではなく「スタート」
動画の中でも語られていたように、苗づくりはあくまでスタート地点。
この先、夏場の厳しい環境を乗り越え、秋に定植し、冬を迎え、春に収穫を迎える――。
いちごづくりは、長く、気の抜けない旅路です。
特に、これからやってくる夏場の管理は、いちご農家にとって最大の難関。
苗づくり以上に、温度・湿度・病気との戦いが待っています。
だからこそ、次回は「夏場のいちご管理」や「家庭菜園での失敗を防ぐコツ」についても、
農家ならではのリアルな目線で、しっかりとお伝えしていきたいと思っています。
皆さんの「育てる楽しさ」「増やす喜び」を、もっともっと広げられるように。
これからも、農家としての経験と本音を、惜しみなく発信していきます。
またぜひ、次回の投稿も楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
🔗 参考元動画はこちら(YouTube)
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