「温度さえ合えばいちごはよく育つ」——これは多くのベテラン農家が口を揃えて言う言葉です。いちごは温度に対して非常に敏感な作物であり、光・水・肥料がしっかり管理されていても、温度が外れると収量も品質も大きく低下します。
冬は加温コストとの戦い、夏は高温障害との戦い——ハウス栽培では一年中温度との格闘が続きます。しかし、いちごが「どの時期に何℃を求めているか」を正確に理解していれば、無駄なコストをかけずに必要な温度管理ができるようになります。
この記事では、月別・生育ステージ別の理想温度データと、加温・冷却・花芽分化のための夜温管理まで、ハウスいちご栽培の温度管理を体系的に解説します。
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いちご栽培における温度の基本的な考え方
いちごの生育は「気温」だけでなく、「地温(根圏温度)」と「昼夜の温度差(日較差)」も重要な要素です。この3つを組み合わせて管理することで、収量と品質の最大化が図れます。
温度が影響する主な生育プロセス
花芽分化:低温(夜温10℃前後)と短日条件が花芽分化を促します。夜温が高すぎると花芽分化が遅れ、収穫開始が大幅に遅れることがあります。
開花・受粉:花粉の活力が最大になる温度帯は18〜25℃です。30℃を超えると花粉が死滅し、奇形果や空洞果が増えます。逆に低温すぎると花粉の飛散が少なくなります。
果実の肥大・着色:適度な夜温の低下が糖度を高め、着色を促進します。温かすぎる夜が続くと、色が薄く甘みの少ない果実になりやすいです。
「温度管理は難しいと思っていましたが、月ごとの目標温度を決めて、そこから大きく外れないように意識するだけで収量が安定しました。完璧を求めるより、危険ゾーン(30℃超え・5℃以下)を回避することを優先するのが実践的だと思います。」
月別・時間帯別の理想温度一覧
いちごの生育ステージに合わせた月別の理想温度(午前・午後・夜間)の目安は以下の通りです。品種や地域によって多少異なりますが、管理の基準として活用してください。
| 月 | 午前(朝〜昼) | 午後(昼〜夕) | 夜間 | 主な管理のポイント |
|---|---|---|---|---|
| 1月 | 15〜20℃ | 18〜23℃ | 5〜10℃ | 加温維持・2番果管理 |
| 2月 | 15〜20℃ | 18〜23℃ | 5〜10℃ | 換気開始タイミングに注意 |
| 3月 | 18〜22℃ | 20〜25℃ | 8〜12℃ | 収穫ピーク・高温注意 |
| 4月 | 18〜22℃ | 22〜26℃ | 10〜15℃ | 換気増加・加温終了準備 |
| 5月 | 20〜25℃ | 24〜28℃ | 12〜18℃ | 収穫終了・育苗開始 |
| 6月 | 22〜28℃ | 26〜30℃ | 15〜20℃ | 遮光・換気強化 |
| 7月 | 24〜30℃ | 28〜32℃ | 18〜22℃ | 高温対策最優先 |
| 8月 | 24〜30℃ | 28〜32℃ | 18〜22℃ | 花芽分化準備・夜温管理 |
| 9月 | 22〜28℃ | 26〜30℃ | 15〜20℃ | 花芽分化促進・定植準備 |
| 10月 | 20〜25℃ | 24〜28℃ | 12〜18℃ | 定植後の活着管理 |
| 11月 | 18〜22℃ | 22〜26℃ | 10〜15℃ | 1番果の花芽・加温開始 |
| 12月 | 15〜20℃ | 18〜23℃ | 5〜10℃ | 1番果収穫・加温本格化 |
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関東の実際の気温との差:ハウスが必要な理由
いちごの理想温度と、関東平野部の実際の平均気温を比較すると、ハウス栽培が必須である理由がよくわかります。
| 月 | いちごの理想1日平均気温 | 関東の実際の1日平均気温 | 差(目安) |
|---|---|---|---|
| 1月 | 15〜18℃ | 5〜6℃ | 約+10℃加温が必要 |
| 2月 | 15〜18℃ | 6〜7℃ | 約+9℃加温が必要 |
| 3月 | 16〜20℃ | 9〜11℃ | 約+7℃加温が必要 |
| 7月 | 24〜28℃ | 25〜27℃ | ほぼ適温(夜温が高い) |
| 8月 | 24〜28℃ | 26〜28℃ | 適温だが夜温が高すぎる |
| 9月 | 22〜26℃ | 22〜24℃ | 外気とほぼ一致 |
冬〜春(12月〜4月)は外気温が理想より大幅に低いため、ハウス加温が不可欠です。一方、夏(7〜8月)は昼間の気温はほぼ適温ですが、夜温が高すぎて花芽分化が促進されないという課題があります。
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生育ステージ別の重点管理
開花・結実期(12〜4月):品質を決める冬の温度管理
この時期は「日中に適温を保ちながら夜温を下げる」ことが品質向上のカギです。日中18〜25℃で光合成を促進しながら、夜間は5〜10℃まで下げることで糖度が上がり、着色も良くなります。
加温コストを抑えるためには、日没前にしっかり換気を閉め、ハウス内に熱を溜めてから暖房に切り替える「保温換気」の技術が重要です。二重カーテンを活用することで、夜間の放熱を大幅に抑えられます。
夏季管理(6〜8月):高温障害を防ぐ冷却対策
夏のハウスは外気以上に高温になります。ハウス内が30℃を超えると花粉が死滅し、35℃超えは株そのものにダメージを与えます。以下の対策を組み合わせて温度を管理します。
遮光資材:外側に遮光ネット(遮光率20〜50%)を張ることで、太陽放射熱を大幅に削減できます。
換気の強化:天窓・側窓を最大限に開けて通風を確保します。扇風機やファンで空気を循環させることも効果的です。
ミスト冷却:ハウス内にミスト散布機を設置し、蒸発冷却で気温を下げます。特に日中の高温時間帯(10〜14時)に効果的です。
花芽分化期(8〜9月):夜温を下げることが最重要
いちごが翌シーズンの花芽を作る「花芽分化」は、夜温が13〜15℃以下になることで促進されます。8〜9月に夜温が高いと花芽分化が遅れ、収穫開始が大幅に遅れます。
9月になっても夜温が18℃以上続くと、花芽分化が大幅に遅れます。特に関東〜西日本では、自然冷涼だけでは花芽分化が間に合わないケースがあり、夜冷処理(ポット苗を低温室で冷やす)や電照(夜を短くする→その後急に暗くする)などの人工的な処理が有効です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 夜間の温度を下げすぎると霜害が心配です。どう判断すればいいですか?
いちごの葉は-2〜-3℃で凍害が始まります。夜間設定温度は5℃を下限の目安にしましょう。暖房の設定温度を5〜6℃にしておけば、外気が氷点下になってもハウス内の温度は保たれます。最低気温センサーとアラームを設置しておくと、異常時にすぐ気づけます。
Q2. 日中に30℃を超えてしまいました。果実への影響はありますか?
一時的に30℃を超えた程度であれば、大きな影響は出にくいです。ただし、30℃超えが毎日続いたり、35℃近くになる日が続いたりすると、花粉の活力低下による奇形果・空洞果が増える可能性があります。換気・遮光を早めに行い、ピーク時間帯(11〜14時)に30℃を超えないよう管理することが重要です。
Q3. 温度計はハウスのどこに設置すればいいですか?
株の葉面に近い高さ(地面から50〜80cm)のハウス中央付近が最も実態に近い温度が測定できます。複数箇所(入口付近・中央・奥)に設置して比較すると、ハウス内の温度ムラが把握でき、局所的な管理が改善しやすくなります。換気口や暖房機の近くは外気・熱気の影響を受けやすいため、測定場所には適しません。
まとめ
いちご栽培の温度管理のポイントをまとめます。
✅ 温度が品質と収量を決める:光・水・肥料が整っていても温度が外れると大きく低下する
✅ 時間帯別の管理が基本:日中は光合成促進・夜間は低めに保って品質向上
✅ 開花期(12〜4月):日中18〜25℃・夜間5〜10℃が理想。糖度と着色を高める
✅ 夏(6〜8月):遮光・換気・ミスト冷却で30℃超えを防ぐ
✅ 花芽分化期(8〜9月):夜温13〜15℃以下が必要。高夜温は花芽分化遅延の原因
✅ 関東では冬に+10℃の加温が必要:ハウスと加温設備なしではいちご栽培は成立しない
✅ 温度計は複数箇所に設置:ハウス内の温度ムラを把握して局所的な管理改善につなげる
温度管理は毎日の積み重ねです。月ごとの目標温度を意識しながら、危険ゾーンに入らないよう日々の観察を続けていきましょう。
※この記事はAIを活用して執筆・修正しています。

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