『あまりん』はなぜ高く売れる?価格が上がらない農作物との違い

「農作物の価格はなぜ上がらないのか」を聞いて思ったこと 〜いちご農家・丹羽いちご園からの本音〜

こんにちは。埼玉県吉見町でいちご農家を営んでおります、丹羽いちご園の丹羽です。
今日は、YouTubeで話題になっていた「農作物の価格はなぜ上がらないのか。日本経済の闇」という動画を拝見して、農家として感じたことや思ったことを素直に綴らせていただこうと思います。

目次

■「大事なものほど安い」という現実に、思わず膝を打ちました

この動画、まさに農家としては「それなんですよ…」と膝を打ちたくなるような内容でした。
野菜や米、果物など、毎日みなさんが口にするものは、命を支える「本当に大事なもの」です。
それなのに、価格はなぜか低迷したまま。
私たち農家は、土にまみれて一生懸命作っているのに、どうしてこんなに安いんだろう。
その疑問をずっと抱えてきました。

「高く売ればいいじゃないか」と思われるかもしれません。
でも、実際にはそう簡単にいかないのです。
高くすれば「高すぎる」「スーパーで買った方が安い」と言われ、安くすれば「こんなに苦労してこれだけ?」と自分で落ち込む。
そんなジレンマと何年も向き合ってきました。

■介護や保育、インフラと同じ構造に納得

動画で「大事なものほど安くなる」「介護や保育、インフラの仕事も同じ」と言っていたのが特に印象的でした。
本当にその通りです。
「誰でも必要とするものほど、当たり前になりすぎて価格がつかない」
これが今の社会の仕組みなんだな、と改めて納得しました。

私たちいちご農家も、命を支える「食」を作っています。
でも、日本はもう食べ物が溢れている時代です。
戦後のように「食べ物がない」「みんなが飢えている」状況なら、農産物の価格は自然と高くなったのでしょう。
けれど、今の日本は飽食の時代。
どこのスーパーに行っても食べ物は並んでいます。
その中で「いちご」の価値をどう伝えるか。
これは、私たち農家に突きつけられている大きな課題なのだと痛感しました。

■「健康」「オーガニック」も記号の一つ 〜実は昔、無農薬米を作っていました〜

動画では、「健康志向」や「オーガニック」が記号として価値を高めた例も紹介されていました。
これも農家として非常にリアルな話です。

実は、今でこそいちご農家としてやっていますが、昔は無農薬・有機農業でお米を作っていた時代があります。

「体にやさしい」「環境にいい」「子どもたちに安心して食べさせられる」
そんな理想を抱いて、除草剤も使わず、農薬も使わず、
一株一株、手で雑草を取って、泥にまみれて…
それはもう、並大抵の苦労じゃありませんでした。

ですが、現実は甘くなかった

いざ収穫を迎え、無農薬米として出荷しようとした時、
「え、普通のお米より高いの?」
「うちはそんな高い米はちょっと…」
そんな声ばかりだったのを、今でも忘れられません。

手間ひまも、コストも、労力も、何倍もかかっている。
それなのに「高すぎる」と言われてしまう。
正直、心が折れそうになりました。

「本当にいいものを作っているのに、なぜ売れないんだろう」
「健康にいいお米なのに、どうして価値が伝わらないんだろう」

そう悩み続けて、結局、数年で無農薬米作りはやめることになりました。

今なら分かります

あの時は、「いいものを作れば売れる」と信じていました。
でも、今なら分かります。
「伝え方」「物語」「記号」を乗せなければ、伝わらないし、売れないということを。

健康やオーガニックの「価値」を、どう見せるか、どう届けるか。
それを一緒に考えて、共感してくれる人たちと繋がっていく努力が足りなかったのだと、今なら思えるのです。

農家はどうしても「物を作ること」だけに集中しがちです。
でも、本当に必要なのは、「物語を伝えること」「価値を共感してもらうこと」なのだと、今は心からそう感じています。

■フルーツは「記号付加」で成功しているという事実 〜埼玉のブランドいちご「あまりん」もその一つ〜

動画の中で「フルーツは記号付加で価格が爆上がりしている」と話していましたが、これは本当にその通りです。

埼玉県のいちご農家として言わせていただくと、
今、**「あまりん」**という品種がまさに「ブランドいちご」として注目されています。
「あまりん」は、埼玉県が開発した特別な品種で、
濃厚な甘みとジューシーな果汁が特徴です。

私たち丹羽いちご園でも「あまりん」を栽培していますが、
「埼玉のいちご?」「本当においしいの?」と最初は半信半疑だったお客様が、
一口食べて「何これ、甘い!」「今まで食べたいちごと全然違う!」と驚かれることがよくあります。

「あまりん」という名前が広まり、テレビや雑誌でも取り上げられるようになってからは、
「一度食べてみたい」「あまりんを探してる」という声も増えてきました。

まさに「あまりん」は、品種そのものの価値に加えて、「埼玉ブランド」「希少価値」「濃厚な甘み」という記号や物語が乗っかることで、高く評価される存在になっているのだと感じます。

■農家が変わらなければ、未来はない

正直なところ、昔は「いいものを作っていれば、誰かが気づいてくれる」と思っていました。
でも、今は違います。
いいものを作るのは「当たり前」。
それをどう伝えるか、どう体験してもらうか、どう物語を紡いでいくか。
そこまでやって、初めて「選ばれる」時代になったのだと感じます。

私たち丹羽いちご園も、もっとお客様に「来てよかった」「また来たい」と思ってもらえるよう、農園の魅力や物語を伝える努力を続けていきます。

■最後に…「農家=夢のある仕事」にしたい

農業は「安い」「厳しい」「儲からない」と思われがちですが、
私たちは「農家は夢のある仕事」だと信じています。

自然と向き合い、土を耕し、種をまき、実を結ぶ。
そのすべてが「命を育てる」尊い仕事です。

でも、それだけでは生き残れません。
「命を支える仕事」だからこそ、「記号」や「物語」を上手に乗せて、
「農家ってかっこいい」「農業って面白い」と思ってもらえるような未来を作っていきたいです。

もしこの記事を読んでくださった皆さんが、少しでも「農家って大変だけど、面白そうだな」と感じていただけたら、とても嬉しいです。

そして、ぜひ一度、吉見町の丹羽いちご園に遊びに来てください。
あまりんの甘い香りと、楽しい時間をご用意してお待ちしております。

それでは、また次回のブログでお会いしましょう。

🔗 参考元動画はこちら(YouTube)

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