「自国第一」の幻想:アメリカ農業が崩壊する日

「自国第一」の末路:アメリカ農業の自傷と、パラオが示した尊厳の選択

今回の報道は、まさに現代の国際経済の歪みと政治的誤謬が交錯した極めて象徴的な事例でした。アメリカにおける保護主義の暴走と、それが自国の農業、さらには国際市場全体に与える甚大な影響。そして、小国ながらも主権を貫いたパラオの覚悟。対照的な2つの事例を通じて、国家運営の在り方とは何か、改めて考えさせられました。

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■アメリカ農業の「自殺行為」:誰がために税はあるのか

アメリカ政府が突如発表したメキシコ産トマトへの20.91%という高関税。国内のトマト生産者、特にフロリダの業界団体は「歴史的勝利」と歓喜したようですが、その勝利は果たして誰のためのものでしょうか?

結果としてアメリカ国民は、トマトの価格高騰と供給不安という「ツケ」を払わされ、メキシコ政府は報復として、アメリカからのトウモロコシや豚肉の輸入制限を検討。実際、アメリカ産のGMOトウモロコシは、メキシコ市場での命綱です。これが閉ざされるというのは、「敵」の仕業ではなく、アメリカ政府自らが振るう“自傷の刃”にほかなりません。

特に痛ましいのは、その余波を一身に受けているのが、かつてトランプ政権を支持し、「アメリカを再び偉大に」と願った農民たちである点です。彼らは今、「私たちはもう何を売ればいいのか?」という、絶望の問いを繰り返しています。

■政治の道具と化した「港」:戦略不在の経済政策

さらに驚かされたのは、港湾費用すらも制裁手段として利用し、輸出の拠点であった港を「経済戦争の最前線」にしてしまったことです。アメリカはもはや、トラクターも港も倉庫も持っています。しかし決定的に欠けているのは「ビジョンあるリーダーシップ」です。

政治の目的が「選挙勝利」や「ポピュリズムへの迎合」へと矮小化されることで、外交・通商政策が合理性を失い、国家運営が全くの無計画な賭博のようになっている。この構造は非常に危険です。特に食料や農業のように、国家の根幹を成す産業分野でそれが起きると、持続可能な発展は望めません。

■パラオの選択:小国が示した尊厳の政治

一方、極東の太平洋に浮かぶ小国パラオは、全く逆の道を選びました。中国からの経済支援――しかも観光インフラという即効性のある分野における巨額投資――を受けながらも、「主権を売らない」という強い決意のもと、中国との関係を断絶。その決断は、経済的には非常に痛みを伴うものでしたが、長期的に見れば国家としての自立性と国民の誇りを守る賢明な選択だったと言えるでしょう。

このとき、日本が支援に回り、観光再生や農業支援、教育・医療などの分野で協力を継続したことは非常に意義深いことです。日本の支援は一時的な恩恵ではなく、「現地に根付く力」を育てる形でした。こうした支援が、結果としてパラオ経済の復活につながり、国民の自尊心を守ることにも貢献しています。

■「外圧」ではなく「内側からの崩壊」

今回の報道の中で最も印象的だったのは、「アメリカは戦争やパンデミックで滅びるのではない。愚かな政策と、内部からの崩壊で自らを殺しているのだ」という一文です。

私も常々、組織でも国家でも、「内側の崩れ」が最大のリスクであると申し上げてきました。指導層が短期的な支持率や票目当てに過剰な保護主義を押し進め、論理や理性ではなく感情で国の舵を取れば、破綻は時間の問題です。

トランプ政権の遺産を完全に否定できていない今のアメリカもまた、その構造的問題を抱えています。グローバル経済において、孤立は最大の弱点です。世界はもはや「一国完結型の繁栄」を許す時代ではないのです。

■農業こそ外交の柱にすべきだ

日本も他人事ではありません。食料自給率が低く、資源も乏しい日本にとって、農業・漁業の輸出促進は極めて重要な外交カードであるべきです。それを政治や官僚主導の「保護」だけにとどめるのではなく、「攻めの農業」として世界市場に通用するブランド戦略を展開すべきです。

パラオとの連携における日本の対応はまさにその成功例であり、「尊敬と信頼に基づく支援」の在り方を示しています。これを機に、開発支援・外交・経済戦略の三位一体的なアプローチをさらに加速させるべきでしょう。

■結論:国を動かすのは「理念」と「信頼」である

アメリカの迷走の本質は、単なる政策の失敗ではありません。それは「国家の根本を支える理念」を喪失し、「世界との信頼関係」を軽視した結果です。トランプ政権が掲げた「アメリカ第一」は、耳障りの良いスローガンでありながら、長期的なビジョンを持たず、排他主義と保護主義を助長するだけのものだった。その影響を最も強く受けているのが、皮肉にも彼を支持してきた農民たち自身なのです。国家とは一部の勝者のためだけにあるものではなく、国民全体、そして国際社会とどう共存していくかという視点が不可欠です。

一方、小国パラオは経済的圧力に屈せず、信頼できるパートナーである日本を選び、主権と価値観を守り抜きました。その結果、長期的な経済回復と地域の安定を手に入れつつあります。これは国の「大きさ」ではなく、選択の「質」が未来を決めるという証です。国家は「何を持っているか」ではなく、「何を信じ、誰とどう生きるか」で評価される時代に入ったのです。

私たち日本人は、世界の中でどのような役割を果たすのか。「経済的合理性」「倫理的責任」「国際協調」。この3つの軸を見失わず、国家としての行動原理を再定義しなければなりません。信頼を築くには時間がかかりますが、失うのは一瞬です。どれだけ経済が発展していても、「信じてもらえない国」になった瞬間に、その価値は瓦解します。

今こそ問われています。我々が目指す国家像とは何か。自国第一か、共存の道か。その答えを出すのは、政治家ではなく、私たち一人一人の意思と行動に他なりません。

🔗 参考元動画はこちら(YouTube)

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