春になっていちごの実がつき始めると、親株からひょろっとした細い茎が伸びてきます。これが「ランナー」です。
「収穫中なのに切っていいの?」「放置したら実が小さくなるって本当?」そんな疑問を持つかたは多いと思います。
私は埼玉県吉見町でいちご農家を営んで7年になります。ランナーの扱いを間違えると、収穫量がガクッと落ちます。でも正しく管理すれば、来年の苗を無料でつくれる大切な資源にもなります。
この記事では、収穫中の対応から夏の苗づくりまで、一連の流れをまるごと解説します。初めてのかたでも今日から実践できる内容にまとめました。
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ランナーが伸びてきたらまず確認すること
収穫中は「見つけたら即カット」が鉄則
収穫が続いているあいだは、ランナーをぜったいに放置してはいけません。
ランナーには親株の栄養がどんどん流れ込みます。実をつくるエネルギーが奪われるので、果実が小ぶりになったり、甘みが落ちたりします。
私の農園でも、うっかり1週間放置したら、その株の実だけ明らかに小さくなった経験があります。ハサミを1本持ち歩き、見つけるたびに根元からスパッと切り取る習慣をつけましょう。
ランナーを放置すると病気のリスクも上がる
栄養を取られるだけでなく、ランナーは病害虫の温床にもなります。
ランナーが地面を這うと、茎や葉が重なって風通しが悪くなります。湿度が上がると、うどんこ病や灰色かび病が広がりやすくなります。
ランナーの管理は収量アップだけでなく、病害虫の予防としても欠かせない作業です。週に1回はランナーチェックをカレンダーに組み込んでおくと安心です。
ランナーを「残す」3つのタイミング
ランナー管理の3ステップ
①収穫中 → 見つけ次第すべてカット
②収穫終了(6月頃)→ 苗づくり用に2番・3番株を選んで残す
③子株が根付いたら → 親株からランナーを切り離す
①収穫終了後が苗づくりのスタートライン
収穫がひと段落したら、今度はランナーを伸ばし始める番です。
6月ごろ、収穫が落ち着いてくると親株はエネルギーを子孫づくりに切り替えます。このときに伸びてくるランナーが来年の苗になります。
苗を毎年買っているかたは、ここから自家育苗に切り替えるチャンスです。私の農園では毎年この時期に100本以上の子株を育てています。苗代がほぼゼロになるので、家庭菜園でも取り組む価値は十分あります。
②苗づくりに向いているのは2番株・3番株
親株に最も近い1番株は使いません。理由は病気を受け継ぐリスクが高いからです。
1番株は親株との距離が近く、病原菌やウイルスを引き継ぎやすいとされています。2番株・3番株は遺伝的に安定していて成長も旺盛です。
葉が3〜4枚ついた2番・3番株を選び、ビニールポットに土を入れてU字クリップで固定しましょう。これが「鉢上げ」という作業です。
③子株が根付いたら親株から切り離す
焦って切ると枯れます。根付くまでランナーは子株の命綱です。
鉢上げから1〜2週間後、葉が4〜5枚になって株がグラつかなくなれば根付いたサインです。株を軽く引っ張ってみて抵抗感があれば、初めてランナーをハサミで切ります。
切り口は親株側に2〜3cmほど残すと傷みにくくなります。反対側(子株より先)は根元から切り捨ててOKです。
子株の鉢上げ手順(初心者向け)
必要な道具と土の選び方
土選びを間違えると、どれだけ丁寧に育てても根が張りません。
いちご専用培土か、野菜用の培養土にパーライトを1〜2割混ぜたものが向いています。水はけと保水性のバランスが大切で、蒸れに弱いいちごには通気性の良い土が欠かせません。
ビニールポット(3号〜4号)を複数用意しておくと、子株をまとめて管理できます。
| 必要なもの | 目安 | ポイント |
|---|---|---|
| ビニールポット | 3〜4号 | 透明・不透明どちらでも可 |
| 培養土 | いちご用か野菜用 | パーライト1〜2割混ぜが◎ |
| U字クリップ | 子株の数だけ | ヘアピンで代用できる |
| ハサミ | 1本 | 使う前にアルコール消毒を |
鉢上げから発根確認までの流れ
作業はシンプルですが、「根付きの確認」だけは丁寧に行ってください。
ポットに培土を入れ、子株の中心を土の表面に置いてU字クリップで固定します。毎日水をやり、1〜2週間後に株を軽く引っ張ってみます。
抵抗感があれば根付いた合図です。そこで初めてランナーを切り離します。このタイミングが早いと水分補給が止まり、子株がしおれてしまいます。
夏越しを成功させる3つのポイント
直射日光を避けた場所で管理する
いちごは暑さに弱い植物です。真夏の直射日光はNG。
適温は18〜25℃で、30℃を超えると成長が止まります。7〜8月は半日陰に移動させましょう。私の農園では遮光ネット(30〜50%)を張ったハウスの中で夏越しさせています。
ベランダ栽培なら、午後の西日が当たらない場所に移すだけで株の疲労感がぜんぜん違います。プランターは移動できる強みを生かしましょう。
水やりは朝に、肥料は薄めに継続する
夏の水やりは朝一番。昼に水をやると鉢の中が蒸れて根腐れします。
肥料は少量を継続的に与えるのがコツです。窒素を与えすぎると葉ばかり茂って株が軟弱になります。液体肥料を2週間に1回、規定量の半分くらいで与えるのがちょうど良いです。
実際にやってみると、薄い肥料を定期的にあげた株のほうが、秋の植え付け後の発根が明らかに早いと感じています。
古い葉はこまめに取り除く
夏に黄色くなった葉は、病気の温床になる前に取り除きましょう。
古い葉には病原菌が潜みやすく、うどんこ病や炭疽病のリスクが上がります。ハサミで根元から切り、株まわりを清潔に保つことが夏越し成功の鍵です。
葉を取り除いたあとは、必ずアルコールで刃を消毒する習慣をつけてください。病気の株から健康な株へ菌を広げないための大切な予防です。
よくある失敗3パターンとその対処法
失敗①:収穫中にランナーを放置 → 実が小さくなる
対処:見つけ次第すぐ切る。週1回ランナーチェックをカレンダーに組み込む。
失敗②:1番株を苗にした → 病気が出やすくなる
対処:必ず2番・3番株を選ぶ。1番株はその場で切り捨てる。
失敗③:根付く前にランナーを切った → 子株が枯れる
対処:引っ張って抵抗感が出るまで待つ。焦りは禁物。
まとめ:ランナー管理は「時期」と「株の番号」がすべて
いちごのランナー管理は、複雑そうに見えて実はシンプルです。
- 収穫中 → 見つけ次第すぐカット(栄養と病害虫の両方を防ぐ)
- 収穫後(6月)→ 2番・3番株を選んでポットへ鉢上げ
- 根付いたら → 切り離して半日陰で夏越し管理
この流れを一度覚えると、毎年苗を買わずにすみます。私の農園でも、この方法で毎年自家育苗して苗代を大幅に抑えています。
秋の植え付けに向けた準備は、じつは今この時期(春〜初夏)から始まっています。ぜひ今年チャレンジしてみてください。
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