「花はちゃんと咲いているのに、実が小さいまま色づいてしまった」「去年より明らかに実が小さくなった気がする」そんな経験はありませんか。
4月のいちご収穫最盛期は、まさにこの悩みが噴き出す季節です。毎日水やりも追肥もしているのに、なぜ実が大きくならないのか。答えは「やり方の問題」ではなく「原因を知らないこと」にあります。
私は埼玉県吉見町で7年間いちごを育てています。最初の3年間は同じ悩みに苦しみ、試行錯誤してきました。今回は実際に私が農園で経験し、解決してきた方法を包み隠さずお伝えします。これを読めば、今日から実の大きさが変わり始めますよ。
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いちごの実が大きくならない3つの原因
まず知っておいてほしいのは、いちごの実の大きさは「受粉したタネの数」で決まるということです。これを知るだけで、対策の方向性がぐっとクリアになります。
農家の豆知識:いちごの赤い部分(果肉)は実は「花托」という茎の一部が膨らんだものです。表面にある小さなツブツブがほんとうの「実(種)」です。このツブツブが多いほど花托が均一に膨らみ、大きくてきれいな形の実になります。
原因① 受粉が不十分で種の数が少ない
いちごは自家受粉する植物ですが、プランター栽培や室内・ハウス栽培では虫が来ません。風も弱く、花粉が雌しべに届きにくいのです。
受粉できた種の数だけ実が膨らむ仕組みなので、受粉が少ないと実は小さくいびつになります。私の農園でも、ハウスの端のほうに置いたプランターのいちごはミツバチが来づらく、毎年実が小さめになりがちでした。
開花から3〜4日以内が受粉の適期です。この時期を逃すと、どんなに上手に世話をしても実は大きくなりません。
原因② 窒素過多で葉ばかり茂っている
「追肥を丁寧にやっているのに実が小さい」という方に多いのが、この窒素過多の問題です。
窒素は葉や茎を育てる栄養素です。窒素が多すぎると、株は葉を旺盛に茂らせますが、花芽の形成や果実の肥大には栄養が回りません。葉の色が濃くて大きいのに実が小さいなら、まず窒素過多を疑ってください。
実際に私の農園では数年前、「野菜に効く」と勧められた窒素の多い肥料を使ったことがあります。確かに葉はイキイキとしていましたが、その年の実は全体的に小さく甘さも今ひとつでした。翌年からはリン酸・カリ主体の肥料に切り替え、劇的に改善しました。
原因③ 一株に実が多すぎて栄養が分散している
花がたくさん咲いて実が鈴なりになるのは一見うれしいことですが、株の体力には限界があります。
一つの株が一度に育てられる実の数には上限があり、その数を超えると一粒一粒に行き渡る栄養が少なくなります。10個の小さな実より、5個の大きな実のほうが、食べごたえも甘さも断然上です。
プランターでの家庭栽培ならなおさらで、土の量が限られているぶん株への負担が大きくなります。
農家が実践する具体的な解決方法
解決策① 晴れた午前中に毎日、人工授粉を行う
筆や綿棒を使った人工授粉は、プランター栽培の必須作業です。やり方はとてもシンプルです。
| 道具 | 使い方 | ポイント |
|---|---|---|
| 水彩用の細筆 | 花の中心をやさしくなでる | 開花3〜4日目の花に行う |
| 綿棒 | 花粉を別の花に移す | 花粉が出ている花で棒先に付ける |
| 耳かきの梵天(綿) | 花の中心をくるくると回す | 複数の花に連続して行う |
コツは「花が開いて2〜3日目、晴れた日の午前10時ごろ」に行うことです。気温が上がり花粉がよく出るこの時間帯が一番効果的です。
私の農園では、ハウス内のミツバチが少ない列は手作業で毎朝10分ほど人工授粉をしています。それだけで実の大きさがはっきりと変わります。たった10分の作業で、収穫の満足感がまるで違うのです。
解決策② 追肥はリン酸・カリを主体に切り替える
4月の収穫期に窒素の多い肥料を与えるのは逆効果です。この時期の追肥は「リン酸」と「カリ」を意識して選びましょう。
注意:「野菜用」と書いてある汎用肥料の多くは窒素が多めに配合されています。いちごの収穫期にはいちご専用か、「リン酸・カリ強化」と書かれた肥料を選んでください。
目安は2週間に1回、液体肥料なら1週間に1回です。ただし葉が濃緑色でツヤツヤ茂っているなら、追肥はいったん止めて様子を見ましょう。
リン酸は果実の充実と甘さ、カリは根の強化と実の張りに効きます。「大きくて甘いいちご」を目指すなら、この2つがカギです。
解決策③ 実を間引いて1株5〜7個に絞る
勇気がいる作業ですが、間引きは実を大きくする最も確実な方法です。
具体的には、小さすぎるもの・形が明らかにいびつなもの・後から咲いた花の実を優先して取り除きます。1つの花房に実が多い場合は、先端近くの小さな実を摘み取りましょう。
実際にやってみると、翌週には残した実がひと回り大きくなっているのがわかります。私の農園では間引きをした株としなかった株を比べてみたことがありますが、収穫時の平均重量が1粒あたり約4g違いました。間引きは「損」ではなく「集中投資」なのです。
今週からできる具体的なアクション
難しいことは一つもありません。今日から3つのことを始めてください。
【STEP 1】株の状態を確認する
葉の色・大きさをチェックしましょう。濃緑色でツヤがあれば窒素過多のサインです。追肥をいったん止めます。
【STEP 2】晴れた午前中に人工授粉を始める
筆や綿棒を用意して、開花している花すべての中心をやさしくなでます。毎日5〜10分でOKです。
【STEP 3】実の数を数えて間引く
1株につき5〜7個を目安に、小さいもの・いびつなものから取り除きましょう。
この3つを同時に行えば、今ある実がより大きく充実し、次の花からの実も変わってきます。
まとめ:小さな手間が、大きな実を育てる
いちごの実が大きくならない原因は「受粉不良」「窒素過多」「果実の多すぎ」の3つです。どれも今日から対処できる内容です。
水やりや肥料に気を使っていても、この3点が抜けていると実の大きさは変わりません。逆に言えば、この3点を押さえるだけで、ホームセンターの市販苗でも農家顔負けの大きな実が収穫できます。
「小さな手間の積み重ねが、収穫の喜びを大きくする」これが7年間農園をやってきた私の実感です。
ぜひ今日から試してみてください。甘くて大きないちごが待っています。
▶ いちごの追肥タイミングや肥料の選び方についてはこちらの記事もどうぞ:いちごの育て方カテゴリ
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