いちご農家・丹羽が考える「米価高騰と増産政策」〜日本農業の未来を憂う〜
こんにちは。埼玉県吉見町でいちご狩り農園を営んでおります、「丹羽いちご園」の丹羽です。
今回も、私の感想ブログを楽しみにしてくださっている皆さま、本当にありがとうございます。今日も農家目線で、皆さまの食卓や日本農業に関わる大事な話題をお届けしたいと思います。
さて、今回取り上げるのは、先日ニュースで特集されていた「米価高騰」と「農業政策転換」に関する話題です。番組をご覧になった方も多いと思いますが、私自身、いちご農家という立場から非常に考えさせられる内容でした。
日本の主食・お米が高騰している。
それに対して政府は「米の生産量を増やす」と方針を転換した。
一見、単純な話に見えますが、実際に農業に関わる者としては、そんな簡単な問題ではないと強く感じました。
「値上げしても足りない現実」 〜私たち農家の苦悩〜
ニュースでは、まず町の中華料理店が取り上げられていましたね。チャーハンセットを830円から50円値上げした、と。
「それでもまだ安い」というお店のコメントに、私は思わず「うちと一緒だ…」と苦笑いしてしまいました。
いちご農家としても同じ悩みを抱えています。肥料代、燃料代、資材代、全てが高騰し続ける中、値上げしなければやっていけない。でも、お客様に「高くなった」と思われるのが怖い。
いちご狩りの料金を毎年決めるたびに、私たちも胃がキリキリするような思いをしています。
ニュースで紹介されていた通り、5kgあたり4220円、去年の同時期の2倍以上という異常な米価高騰。
ですが、農家にとって「高く売れるから儲かる」という話では決してありません。
資材も人件費も光熱費も上がる。収益どころか「来年も続けていけるかどうか」という不安の方が大きいのです。
白鳥さんの挑戦に見る「農家の覚悟」と「限界」
今回、特に私が注目したのは、宮城県栗原市で米作りをしている若手農家・白鳥一徳(しらとりかずのり)さんの取り組みでした。
大学卒業後、23歳で就農し、たった一人で始めた農地を140ヘクタールまで広げた——その努力と情熱には本当に頭が下がります。
白取さんは、田植えをせずに種を直接まく「乾田直播(かんでんちょくはん)」という方法で、大規模化・効率化を実現していましたね。
「農地をどんどん頼まれて、気づいたら7倍になった」という言葉からは、地域農業を背負う重責がひしひしと伝わってきました。
ですが、白鳥さんも「これ以上は難しい」と口にしていました。
「条件の悪い農地は断らざるを得ない」「働きやすい職業にしなければ続かない」
その言葉には、農家としてのリアルな苦悩が詰まっていました。
いちご農家の私も全く同じ気持ちです。
農地を増やしても、人手も資材も簡単には増やせません。リスクも責任も膨らむ一方です。
「やれば儲かる」なんて、そんな簡単な話ではないのです。
増産だけでは救えない「農業の根本問題」
政府は「生産量を増やす」と打ち出しましたが、農家からすれば「また現場を知らない人が簡単に言うなあ」と思わざるを得ません。
担い手が減り、高齢化が進み、資材や燃料は高騰し続ける。
「増やせ」と言われても、どうやって増やすのか、その具体策は何一つ示されていません。
いちご農家としても、苗を倍に増やすことは技術的には可能です。
でも、ハウスの数、温度管理の手間、収穫の人手、販売ルート——全てが倍必要になります。
それに見合うだけの利益が確保できなければ、規模拡大は「農家を苦しめるだけの選択肢」に過ぎません。
「安さ」を求めすぎた社会への警鐘
ニュースでは、今年の新米価格が「去年より3割高くなる見込み」と伝えていました。
消費者の皆さんにとっては、「また値上げか」「家計が苦しい」と思われるかもしれません。
ですが、その裏には「このままでは米を作る人がいなくなる」という、もっと深刻な現実があります。
いちごも、お米も、野菜も、果物も。
「安くて当たり前」「値上げは悪」という風潮が続けば、作る人はどんどん減ります。
安さを求め続けた結果、いざ品薄になったときに「なぜ作らないんだ」と言われても、農家はもう戻ってきません。
だからこそ、私たちは「適正な価格」で「持続可能な農業」を実現しなければならないのです。
消費者の皆さんにも、ぜひ「価格だけでなく、作り手の背景にも目を向けてほしい」とお願いしたいです。
いちご農家・丹羽から、皆さんへのメッセージ
今回のニュースを見て、改めて痛感しました。
農業を守るには、農家だけがいくら努力しても、もはや限界があるということです。
私たち農家は、朝早くから夜遅くまで、時には天候や病害虫の不安と闘いながら、1年365日、作物と向き合っています。
けれど、どれだけ努力しても、社会全体が「安いのが当たり前」「農産物はいつでも好きなだけ手に入る」と思い続けている限り、農業の未来は先細るばかりです。
農業を「日本の大切な産業」として守っていくには、農家だけではなく、消費者である皆さん一人ひとり、さらには社会全体が「農業を支える意識」を持つことが、これからの日本にとって本当に大事なことだと私は思います。
私たち丹羽いちご園にも、毎年たくさんのお客様がいちご狩りに来てくださいます。
「また来年も来たい!」
「ここのいちごが一番美味しい!」
「大変だと思うけど、頑張ってくださいね!」
そうやって、皆さんが笑顔で声をかけてくださるたびに、私は「また来年も頑張ろう」と心から思えるのです。
たった一言でも、その言葉が私たち農家にとってどれだけ大きな力になるか、計り知れません。
お米も、いちごも、野菜も、果物も、畜産品も。
「安くて当たり前」「どこでも買えて当たり前」と思うのではなく、
「誰かが一生懸命、心を込めて作ってくれたもの」として、
その価値を少しだけでも感じて、手に取っていただけたら本当に嬉しいです。
そして、今日のこのブログを通して、少しでも「農業の未来」に関心を持ってもらえたなら、農家としてこれ以上嬉しいことはありません。
今、日本の農業は本当に大きな岐路に立たされています。
農家の苦しみや、現場のリアルを知っていただくこと。
それが「自分たちの食を守る」第一歩になると、私は信じています。
次回も、皆さんが「早く読みたい!」と思ってくださるような、農家ならではのリアルな視点で、社会や農業、そして私たちの日常をお届けしていきたいと思います。
これからも、どうぞ丹羽いちご園を、そして日本の農業を、温かく見守ってください。
それでは、また次回お会いしましょう。
🔗 参考元動画はこちら(YouTube)
コメント