🍓いちご農家の視点で考える「米価格高騰と増産政策」~私たち農家が本当に感じていること~
こんにちは。
埼玉県で家族経営の小さないちご農園を営んでいる丹羽です。
本日は、CBCテレビ大石アナウンサーの「コメ高騰」解説動画を視聴し、一農家としての感想を、いつも応援してくれている皆さんにお届けしようと思います。
■ まず思ったこと ― 「農家はモノを作ればいい」という誤解
今回のニュースを見て「またか…」と思いました。
国が「増産しろ」と言い出すタイミングが、どうしても遅すぎるんです。
米農家さんたちが「急には無理だ」と声を上げるのは当然のことで、私も同じ経験を何度もしてきました。
「作ればあるんでしょ?」って。
でも、農業ってそんなに簡単じゃないんです。
苗を育て、土を作り、天気を読み、水を管理し、病害虫と闘いながらやっと実がなる。その準備には一年どころか、もっと長い時間がかかります。
■ コメ増産指示のタイミング ― 去年の春じゃなきゃ間に合わない
ニュースで紹介されていたように、国が「増産を」と言い出したのは今年の1月。
農家さんたちが実際にその指示を受けたのは2月。
でも、種もみの確保は前年の春には決まっている。
つまり、増やすと言われた頃にはもう「どうにもならない」のが現実です。
これって、いちご農家で言えば「12月のいちごシーズンに入ってから、今年は倍にしてくれ」と言われてるようなものです。
そんな無茶な話、あるわけないじゃないですか…。
国の「机上の空論」と、現場の「生きた時間感覚」が、まったく噛み合っていないと痛感しました。
■ 農地不足は米だけじゃない、日本中の農業共通の課題
今回、愛知県の田んぼが半分に減っているというデータが紹介されていましたが、これは埼玉の私たちの地域も同じです。
農家が高齢化し、後継者もいない。
田んぼや畑は売りに出され、結局、工場や宅地に変わっていく。
この流れはもう止まらないんじゃないか、と感じています。
私の地域でも、いちご農家をやめた知り合いが数人います。
「跡を継ぐ人がいない」「利益が出ない」「労力に見合わない」
そんな理由で辞めていくのを、私はただ見送るしかありませんでした。
「農業は国の基盤だ」とはよく言いますが、農地を守る政策も無ければ、農家を守る仕組みも無い。
そんな状態で「作れ」「足りない」と言われても、私たちにはどうにもできません。
■ JAや国だけの責任ではない、消費者の意識も問われている
コメント欄を読んでいて、「選挙に行こう」という意見が多かったのも印象的でした。
確かにその通りです。
私たち農家はJAや農水省に振り回されていると感じることもありますが、もっと根本的には「食べる側の意識」も大きく影響しています。
「安くて当たり前」
「高くなったら買わない」
「高いなら海外産でいい」
こんな風に思われているうちは、農業は続けられません。
いちごも同じです。
「スーパーの特売で1パック298円」
「それ以上なら高い」
そう思われてしまうと、手間ひまかけて育てる意味が見出せなくなってしまいます。
米もいちごも、野菜も果物も、すべて「命」を育てている仕事です。
その価値を、作る側だけでなく、食べる側も一緒に考えてほしい。
今回のニュースをきっかけに、そんな気持ちが強くなりました。
■ 価格が上がるのは悪いことなのか?
ニュースでは「ご飯1杯57円」と紹介され、「高すぎる」という空気感が漂っていました。
でも、私は思います。
これ、実は当たり前じゃないかと。
海外の農産物価格を見ると、日本は「安すぎる」と感じることの方が多いです。
農家がこれだけ減っているのに、価格が上がらない方がおかしい。
「適正価格」で買い支える社会にならない限り、農業は衰退するばかりです。
「高い」と文句を言う前に、「なぜ高くなるのか」「そのお金は誰を支えるためなのか」を、少しでも考えてみてほしい。
そうすれば、今回の米高騰も「悪」ではなく「必要な調整」と見えるかもしれません。
■ いちご農家だから見える「作る側」の本音
最後に、私が一農家として皆さんに伝えたいことがあります。
それは、「農家は利益を求める権利がある」ということです。
「農家=安く提供するのが使命」
そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。
でも、農家も一つの「商売」です。
利益が出なければ続けられない。
後継者も育たない。
未来も守れない。
「高いけど、ちゃんと育てた人が報われる値段」
それを認め合える社会になってほしいと、私は心から願っています。
■ まとめ ― 米だけじゃない、日本農業全体の未来のために
今回の「米高騰」のニュースは、確かに私自身がいちご農家である以上、本来であれば「他人事」として受け流すこともできたかもしれません。
ですが、画面越しに大石アナウンサーが伝える言葉を聞き、コメント欄に並ぶ消費者や農家の本音を目にして、私はどうしても「これは、私たち全員の問題だ」と強く感じずにはいられませんでした。
◇ 農業に求められる「都合の良さ」という現実
米農家さんが「増産は無理」と声を上げている姿は、まさに私たち小規模農家の現実そのものでした。
「出せ」と言われれば出し、「安くしろ」と言われれば安くし、「無くなれば困る」と言われればどうにかして用意する。
でも、その裏には 季節を読み、自然と向き合い、時間とお金を投資し、命を育てる という、誰にも見えない努力があるんです。
農業は工場のようにスイッチ一つで生産量を変えられるものではありません。
「去年の倍作って」と言われても、そんな急ハンドルは切れません。
むしろ、焦って無理な増産に挑んだ結果、品質が落ちたり、病気や害虫のリスクを高めたり、逆に赤字を拡大してしまう危険性さえあります。
それでも、政府も消費者も「農家ならできるだろう」と無責任に求めてくる。
これでは、どれだけ頑張っても報われないのは当然です。
◇ いちご農家も例外じゃない、日本農業が直面する共通の課題
この「増産しろ」という指示のタイミングの遅さ、農地の減少、生産現場への無理解、そして価格への不満。
これらは、決して米農家だけが抱えている問題ではありません。
実際、私たちいちご農家も、苗の確保、資材費や光熱費の高騰、人手不足、気候変動、病害虫リスク、どれ一つ取ってもギリギリの状況です。
それでも「高い」と言われれば、私たちは謝るしかない。
そのたびに「もうやめようか」と心が折れそうになる農家仲間を、私は何人も見てきました。
日本農業全体が今、そういう 「続ける意味を見失いかけている」 段階に来ているんじゃないでしょうか。
◇ 消費者の「当たり前」を変えることが、農業を守る一歩
だからこそ、私はこのブログを読んでくださった皆さんにお願いしたいのです。
「高い」「安い」だけで判断せず、
その価格の裏にある 農家の一年、いや何年もの積み重ね にも、少しだけ目を向けてみてほしいのです。
例えば、スーパーで298円のいちごを手に取ったとき、
「このいちご、どんな苦労を乗り越えてここに並んでいるんだろう?」
そう思い浮かべてもらえたら、私たち農家はどれだけ救われることでしょう。
価格だけを見て「高いから買わない」と切り捨てるのではなく、
「高いけど、ちゃんと作ってくれてありがとう」と言ってもらえるような社会に。
そんな未来を、一緒に目指していきたいと思っています。
◇ 未来に向けて、私たち農家ができること
もちろん、私たち農家も「高いから買えない」と言われないために、努力をやめてはいけません。
質を高め、無駄を減らし、消費者との距離をもっと近づける。
いちご狩りや直売所を通じて、顔の見える農業を続けること。
これもまた、私たち農家に求められている責任だと思っています。
「作れば売れる時代」は、もうとっくに終わりました。
これからは、「どうやって伝えていくか」が農家の仕事の一つになるはずです。
◇ いちごの手入れに込める、未来への想い
明日も、いつものようにいちごの手入れをします。
苗の様子を見て、葉の状態を確認し、土を触り、水加減を考える。
派手なことは何一つありません。
でも、その一つ一つが未来につながっていると信じて、手を動かし続けたいと思います。
私がいちごを育て続ける理由は、ただ「売るため」だけじゃありません。
「食べる人の笑顔を守りたい」
「農業を続ける仲間が、少しでも誇りを持てるようにしたい」
そんな想いがあるからこそ、これからも諦めずに続けていきます。
🍓最後に
ここまで読んでくださったあなた、本当にありがとうございます。
今回の米高騰のニュースをきっかけに、日本農業全体に目を向ける人が一人でも増えたら、これほど嬉しいことはありません。
「農産物の価格」について、皆さんは最近どう感じていますか?
ぜひ、あなたの率直な声をコメントやメッセージで聞かせてください。
次回のブログも、楽しみに待っていてくださいね。
いちご農家・丹羽より 🍓
🔗 参考元動画はこちら(YouTube)
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