いちご栽培において、ハダニは最も頭を悩ませる害虫の一つです。温暖・乾燥を好むハダニは、ビニールハウス内で急速に増殖し、葉の汁を吸って光合成能力を奪います。気づいたときには葉が白っぽくなり、株が弱ってしまっていた——という経験をお持ちの農家も多いのではないでしょうか。
厄介なのは、化学農薬を使い続けると耐性を持った系統が生き残り、やがて農薬が効かなくなることです。この「薬剤抵抗性」の問題に対して、近年注目されているのが「天敵資材」を活用した生物的防除です。
この記事では、ハダニの天敵資材の基本的な仕組みから、バンカーシートの種類・比較・正しい使い方まで詳しく解説します。
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いちごにおけるハダニ被害の特徴
ハダニ(主にナミハダニ・カンザワハダニ)は体長0.3〜0.5mmと非常に小さく、肉眼では見逃しやすい害虫です。葉の裏側に集団で生息し、植物の細胞液を吸汁します。
被害が拡大するメカニズム
ハダニが好む環境条件は「高温(25〜30℃)・低湿度(40〜60%以下)」です。冬のハウスが乾燥しやすいことを考えると、いちご栽培は常にハダニ発生リスクと隣り合わせの状況と言えます。ハダニは1世代約7〜10日で産卵サイクルが回るため、一度発生すると急速に密度が上がります。
| 被害レベル | 葉の状態 | 対応 |
|---|---|---|
| 軽微(初期) | 葉裏に白い点々(吸汁痕) | 天敵放飼で対応可能 |
| 中程度 | 葉全体が白〜黄色っぽく退色 | 天敵+部分的な農薬処理 |
| 重度 | 葉が枯れ始め、糸を張っている | 緊急の農薬処理が必要 |
| 深刻 | 葉全体が枯死、株の生育停止 | 株の回復困難、予防が最重要 |
化学農薬の限界:薬剤抵抗性の問題
ハダニは繁殖サイクルが非常に短く、薬剤に対して耐性を獲得しやすい生き物です。同じ系統の農薬を繰り返し使用すると、耐性を持った個体が生き残って次世代に遺伝し、やがてその農薬が全く効かなくなります。これが「薬剤抵抗性ハダニ」の問題です。
「農薬を系統の違うものでローテーションすれば大丈夫」という考え方もありますが、ハダニの繁殖スピードの速さと世代交代の短さから、ローテーションだけでは耐性化を完全には防ぎきれません。化学農薬と天敵資材を組み合わせた「総合的病害虫管理(IPM)」が、持続的な防除の考え方として推奨されています。
天敵資材とは:ハダニを食べる生き物を活用する
天敵資材とは、害虫を捕食・寄生する生き物(天敵)を製品化したもので、農薬の代わりにハウス内に放飼することで害虫を防除します。ハダニに対する天敵として最もよく使われるのが「カブリダニ類」です。
主なハダニの天敵カブリダニの種類
ミヤコカブリダニ:日本で最も広く使われている天敵。ハダニの成虫・幼虫・卵を捕食する。比較的低温でも活動でき、いちごハウスに適している。
スパイカル(チリカブリダニ):ハダニ密度が高い状況でも効果を発揮する積極的な捕食者。ただし、低温では活動が鈍る。
スパイカルEx(ニセラーゴカブリダニ):花粉も食べられるため、ハダニが少ない時期でも生存・増殖できる。維持型の天敵として有効。
「天敵を使い始めた最初の年は、本当に効くのか半信半疑でした。でも、バンカーシートを定期的に追加しながら管理したシーズンは、過去と比べてハダニの爆発的な増加が一度もなかった。農薬代も減りました。信じて続けることが大事だと感じています。」
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バンカーシートの仕組みと種類の比較
バンカーシートとは、天敵カブリダニが定着・増殖しやすい環境を提供する補助資材です。シートには花粉などのカブリダニのエサが含まれており、ハダニが少ない時期でも天敵が生存・増殖できるように設計されています。
ミヤコバンカー(住化エンビロサイエンス)
ミヤコカブリダニが封入されたバンカーシートです。シートをベッドや通路に設置するだけで天敵が自然に広がっていきます。
特徴・メリット:
・使いやすいパック仕様で設置が簡単
・カブリダニの定着率が高く安定した効果が続く
・農薬の影響を受けにくい環境作りに貢献
・初心者でも扱いやすい設計
注意点:
・初期コストがやや高め
・高温・乾燥環境(湿度40%以下)では定着しにくい場合がある
・天敵資材と相性の悪い農薬(殺ダニ剤の一部)を使用後は再放飼が必要
アリスタライフサイエンスのバンカーシート
アリスタライフサイエンス社が提供するバンカーシートは、複数の天敵種に対応した設計で、圃場の状況に応じた柔軟な配置ができることが特徴です。
特徴・メリット:
・設置の自由度が高く、ハウス内の複数箇所に配置しやすい
・コストパフォーマンスが良く導入しやすい
・天敵の追加放飼と組み合わせた運用が可能
・継続的なモニタリングと組み合わせることで効果が安定
注意点:
・設置方法によっては定着率にばらつきが出ることがある
・定期的なモニタリングと管理が継続的に必要
| 比較項目 | ミヤコバンカー | アリスタのバンカーシート |
|---|---|---|
| 使いやすさ | ◎(初心者向け) | ○(柔軟な運用が可能) |
| 初期コスト | △(やや高め) | ○(低コスト) |
| 定着安定性 | ◎(安定) | ○(設置方法による) |
| 設置自由度 | ○ | ◎(多箇所配置しやすい) |
| 継続管理の手間 | ○ | △(モニタリングが必要) |
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天敵資材を使う上での注意点
農薬との相性に注意
天敵資材を使用している期間中は、天敵に影響を与える農薬の使用を避けることが重要です。特に殺ダニ剤・殺虫剤の多くはカブリダニにも毒性を持ちます。農薬を使用する必要がある場合は、天敵資材に影響が少ない農薬を選択するか、使用後に再度天敵を放飼する対応が必要です。
予防的な放飼が鍵
天敵資材は「ハダニが増えてから使う薬」ではなく、「増える前から天敵を定着させておく予防ツール」です。ハダニが少ない時期から定期的にバンカーシートを設置・追加することで、ハダニが増え始めたときに天敵が対応できる体制を整えておくことが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q1. バンカーシートはどのくらいの頻度で交換・追加すればいいですか?
製品によって異なりますが、一般的には2〜4週間ごとの追加放飼が推奨されています。定期的にハウス内のハダニ密度と天敵密度を調査(葉をルーペで確認)し、天敵の密度が低下していると判断したら早めに追加します。シーズン初めから定期的に続けることが大切です。
Q2. 天敵を放飼した後に農薬を使いたい場合はどうすればいいですか?
天敵に影響が少ない農薬(「天敵に安全」と表示されているもの)を選ぶか、農薬使用後2〜4週間の残効期間を確認した上で再度天敵を放飼します。各メーカーが「天敵農薬との適合性リスト」を公開しているので、使用前に確認することを強くおすすめします。
Q3. 有機農業でも天敵資材は使えますか?
はい、天敵資材(カブリダニ製品)は有機JAS規格でも使用可能なものがほとんどです。ただし、製品によっては有機農産物の生産に使用できない場合もあるため、購入前にメーカーに確認してください。有機栽培ではむしろ天敵資材が主力の防除手段となることも多いです。
まとめ
いちごのハダニ対策・天敵資材活用のポイントをまとめます。
✅ ハダニは予防が最重要:被害が出てからでは対処が難しい。早期発見・早期対応がカギ
✅ 化学農薬の耐性化に注意:同系統を繰り返し使わず、天敵資材との組み合わせ(IPM)が有効
✅ カブリダニが主役:ミヤコカブリダニなどがハダニの成虫・幼虫・卵を捕食する
✅ バンカーシートで天敵を定着:エサを提供することでハダニが少ない時期も天敵を維持できる
✅ ミヤコバンカーは初心者向け:使いやすく安定した定着が特徴。初期コストはやや高め
✅ アリスタのシートは柔軟性が強み:コスト低めで複数箇所への配置がしやすい
✅ 農薬との相性確認は必須:天敵に影響する農薬の使用は放飼効果を台無しにする
天敵農業は「使い始め」の年が最も難しく感じますが、正しく続けることで農薬コストの削減と安定した防除効果の両方が得られます。まずは試験的に一部のベッドから始めてみましょう。
※この記事はAIを活用して執筆・修正しています。

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