「もっとたくさん収穫したいけど、何をどうすればいいかわからない」——いちごのハウス栽培をしているとよくそんな悩みにぶつかります。施肥を増やしてみたり、消毒のタイミングを変えてみたり、試行錯誤を繰り返している方も多いのではないでしょうか。
実は、収量を安定させるカギのひとつが「環境制御」です。ハウスの中の光・CO2・温度・湿度といった環境要素を適切にコントロールすることで、植物の光合成を最大化し、収量と品質を大きく向上させることができます。
この記事では、埼玉のいちご農家の視点から、環境制御の基本知識と、どの要素を優先すべきかの考え方をわかりやすく解説します。
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環境制御とは何か?なぜ重要なのか
環境制御とは、ハウス内の温度・湿度・CO2・光・換気といった生育環境要素を人工的に調整して、植物にとって最適な環境を作り出す技術です。
露地栽培では自然環境に依存するしかありませんが、ハウス栽培では環境をある程度コントロールできます。これが「ハウス栽培の最大のメリット」でもあり、使いこなせるかどうかで収量に大きな差が出ます。
環境制御を学ぶ前は「なぜか今年は収量が少ない」と原因がわからなかったことが多かったです。光量・CO2・温度管理を意識するようになってから、天候が悪い年でも安定した収量が取れるようになりました。
環境制御の4大要素と優先順位
環境制御の主な要素は以下の4つです。これらは互いに影響し合うため、全体のバランスを意識することが重要です。
| 優先順位 | 要素 | 植物への影響 | 制御のしやすさ |
|---|---|---|---|
| 1位 | 光(日射量) | 光合成の直接エネルギー源 | 制御困難(モニタリング中心) |
| 2位 | 温度 | 酵素活性・蒸散・呼吸に影響 | 加温・換気で調整可能 |
| 3位 | CO2濃度 | 光合成の原料 | 炭酸ガス施用・換気で調整 |
| 4位 | 湿度 | 病害発生・蒸散に影響 | 換気・加湿で調整可能 |
第1優先:光(日射量)
植物の光合成は光エネルギーを使って行われます。つまり、光の量が光合成の最上流にある最重要要素です。
ハウス内の光量は、季節・天候・ハウスのフィルム種類・骨組みの構造によって大きく変わります。特に注意すべきポイントは:
- 屋外の日射量とハウス内の日射量は異なる(フィルムや骨組みが光を遮る)
- 測定位置は必ずイチゴの葉の高さで行う(地上高によって大きく変わる)
- 晴れた日はハウス内温度が急上昇→換気が最優先になる
- 曇りの日は光量不足→CO2施用の効果が限定的になる
光は人間が増やすことは難しいので、モニタリング(日射量計での計測)を中心に、遮光シートや換気でハウス内の温度・光バランスを整えることが基本戦略です。
第2優先:温度管理
いちごの生育に適した温度は、日中が20〜25℃、夜間が8〜10℃程度です。この温度帯を保つために:
- 冬〜春:加温機で最低気温を確保し、保温カーテンで夜間の保温を行う
- 春〜初夏:換気を積極的に行い、高温障害を防ぐ
- 温度が高すぎると花芽分化が乱れ、実付きが悪くなる
- 低すぎると生育が停滞し、収穫が遅れる
第3優先:CO2(炭酸ガス)濃度
光合成は「光エネルギー+CO2+水」から行われます。ハウスが閉まっている冬の早朝は、植物の呼吸でCO2が消費され、濃度が大気の半分以下になることがあります。
この状態を改善するために農家が活用するのが炭酸ガス施用です。ただし:
- 換気窓を開けると外気が入るため、CO2施用の効果がなくなる
- 施用のタイミングは「日の出後〜換気開始前」が最も効果的
- CO2を増やすだけでなく、光がないと光合成は進まない(セットで考える)
曇りの日はCO2を施用しても光合成が頭打ちになります。CO2施用は晴れた日の午前中に効果が最大化します。天気を見ながら施用量を調整することが重要です。
第4優先:湿度管理
湿度はうどんこ病・灰色かび病など病害の発生と深く関係しています。特にいちごは果実が密集する収穫期に高湿度になると病気が一気に広がるリスクがあります。
湿度管理のポイント:
- 夜間は湿度が上がりやすいため、内張カーテンの開閉タイミングで調整する
- 日中は換気で湿度を下げ、病害リスクを軽減する
- 葉が濡れた状態が長く続くと病気が発生しやすい→朝の換気が大切
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光合成と環境制御の関係:全体像を理解する
環境制御の最終目標は光合成の最大化です。光合成速度は次のような要因で変化します:
- 光が強いほど光合成速度は上がる(ただし上限がある)
- CO2が高いと、光合成の上限が引き上げられる
- 温度が適切な範囲にあると、酵素が活発に働き光合成効率が上がる
- 湿度が高すぎると蒸散が抑制され、CO2吸収が減る
このように、4つの要素はすべて光合成を通じてつながっています。「どれか一つを完璧に」ではなく、全体のバランスを整えることが環境制御の本質です。
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家庭菜園・小規模農家向け:まず始めるべき環境制御
「炭酸ガス施用設備がない」「センサーが揃っていない」という方でも、できることはたくさんあります。以下の3つから始めてみてください。
STEP1:ハウス内温度の記録を始める
安価な温湿度計(1,000〜2,000円程度)をハウス内に設置して、毎日の最高・最低温度を記録します。これだけで「換気が遅れた日」「加温が足りなかった夜」が可視化されます。
STEP2:換気のルーティンを決める
晴れた日は早めに換気窓を開け、ハウス内温度が25℃を超えないようにコントロールします。換気が遅れると高温障害が起き、実が小さくなったり色づきが悪くなります。
STEP3:ハウスフィルムの状態を確認する
汚れたフィルムは光の透過率を大幅に下げます。年に一度はフィルムを清掃し、劣化していれば新しいものに交換しましょう。これだけで日射量が10〜20%改善することもあります。
よくある質問Q&A
Q. CO2施用設備がなくても光合成は最大化できますか?
A. 可能です。換気を行うと外気のCO2(約400ppm)が入ってきます。密閉されたハウスよりも適切に換気されたハウスの方が、CO2不足になりにくいです。まずは換気管理を徹底しましょう。
Q. 環境制御センサーは必要ですか?
A. あるに越したことはありませんが、まずは温湿度計1台から始めれば十分です。データを記録して傾向を把握することで、設備投資の優先順位が見えてきます。
まとめ
いちごのハウス栽培における環境制御の基本をまとめます:
- ✅ 最優先は「光」——モニタリングと遮光・換気で対応
- ✅ 温度管理は加温と換気のセットで——適温20〜25℃(日中)を目指す
- ✅ CO2は晴れた日の午前中の施用が最効果的
- ✅ 湿度は病害予防のために換気でコントロール
- ✅ 4つの要素はすべて光合成を通じてつながっている
難しく考えすぎず、まずは「温度の記録」と「換気のルーティン化」から始めてみてください。これだけでも収量と品質に目に見える変化が出てきます。
この記事はAI(Claude)の支援で作成し、農家本人(丹羽)が内容を確認・監修しています。

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