「ランナーが出てきたけど、切るべき?それとも伸ばして増やすべき?」
いちごを育てていると、この悩みは必ず出てきます。特に5月〜6月は収穫の終わりと苗づくりの始まりが重なるため、迷う方がとても多いです。
私は埼玉県吉見町でいちごを育てています。農園では毎年この時期になると、「ランナーをいつ切るか、いつ伸ばすか」の判断を繰り返しています。
この記事では、ランナーを切るべきタイミングと伸ばすべきタイミング、そして上手な苗の増やし方を、私の実体験をもとにくわしく解説します。今年の収穫が終わったら、ぜひこの方法で来年のために苗を育ててみてください。
[st_toc]
いちごのランナーとは何か?まず基本を知ろう
ランナーはいちごが子孫を残すための仕組みです
ランナーとは、いちごの株元から横に伸びる細い茎のことです。「ほふく茎」とも呼ばれます。このランナーの先に小さな株(子株)ができて、そこから根が出て新しいいちごの苗になります。
いちごは自然の中で、このランナーを使って仲間を増やすことが本来の姿です。実を付けるよりも、株を増やすことのほうがいちごにとっては優先度が高い時期があります。
ランナーは「いちごが生きようとしている証」なので、出てきたからといって慌てなくて大丈夫です。
ランナーが出る時期はだいたい決まっています
ランナーは主に春〜夏にかけて伸びてきます。気温が高くなる5月以降、どんどん出てくるようになります。収穫中にもランナーは出てくるため、こまめな管理が必要になります。
このタイミングのランナーへの対応が収穫量に大きく影響します。正しい知識を持っておくと、対応に迷わなくて済みます。
「ランナーが出てきた=管理のタイミングが来た」と考えるとわかりやすいです。
収穫中はランナーを切るべき理由【3つの原因】
収穫量が減る3つの主な原因
- 実ではなくランナーにエネルギーが奪われる
- 株が弱って翌年の品質に影響が出る
- 風通しが悪くなって病気が広がりやすくなる
原因① 実ではなくランナーにエネルギーが奪われます
いちごが赤く実るまでには、授粉からおよそ40〜50日かかります。この間、株は実を育てることに全力を注ぎます。しかしランナーが伸びてしまうと、そのエネルギーが苗作りに使われてしまいます。
私の農園でも、ランナー管理を怠った年は確実に実が小さくなり、糖度も落ちました。たった1本のランナーが、品質を目に見えて下げることがあります。
「実がなっている間はランナーを切る」これが農家として守ってきた基本ルールです。
原因② 株が弱って翌年の収穫に影響が出ます
収穫中にランナーを伸ばし続けると、親株がどんどん消耗します。翌年に使う親株が弱ると、そこから取れる苗の品質も落ちてしまいます。
苗の品質は翌年の収穫量に直結します。今年の管理が来年の農園の状態を決める、といっても過言ではありません。
「今年の管理が来年の収穫を決める」これが長年農業を続けて学んだことです。
原因③ 風通しが悪くなって病気が広がりやすくなります
ランナーが株の中で絡まると、風通しが悪くなります。湿気がこもりやすくなり、灰色かび病やうどんこ病が発生しやすくなります。特に梅雨の時期は注意が必要です。
いちごのうどんこ病は、発育適温が18〜22℃で、乾燥した環境でも発生します。株まわりをすっきりさせておくことが、病気の予防につながります。
病気を防ぐいちばん簡単な方法は、株のまわりをきれいに保つことです。
収穫が終わったらランナーを伸ばして苗を増やしましょう
苗づくりを始めるベストなタイミングがあります
収穫が終わるのは、品種や地域によって異なりますが、だいたい5月下旬〜6月上旬です。この時期になったら、今度はランナーを大切に育てる番です。収穫が終わった株から伸びてくるランナーの先に、来年の苗ができます。
私の農園では、最後の実を収穫したその日から「苗づくりモード」に切り替えます。このタイミングを逃さないことが、秋の植え付けまでに良い苗を作るポイントです。
「実を取り終えたら、今度はランナーの番」と気持ちを切り替えることが大切です。
子株・孫株・ひ孫株の違いとおすすめの苗を知ろう
ランナーの先にできる最初の株を「子株」、その子株からさらに伸びたものを「孫株」、さらにその先を「ひ孫株」と呼びます。どの株を苗に使うかで、品質に差が出ます。
| 株の種類 | 親株からの順番 | 苗としての特徴 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| 子株(1番目) | 最初にできる株 | 親株の病気を引き継ぎやすい | △ |
| 孫株(2番目) | 2番目の株 | バランスが良くて丈夫 | ◎ |
| ひ孫株(3番目) | 3番目の株 | 若くて活力がある | ◎ |
| 玄孫株(4番目) | 4番目の株 | 葉が3〜4枚あれば十分使える | ○ |
一般的に、孫株〜ひ孫株が最も品質の良い苗になります。子株は親株の病気を引き継ぎやすいため、私の農園では基本的に使わないようにしています。
「孫株を育てる」ことが、翌年の品質を守るためのプロの選択です。
ランナーから苗を作る5つのステップ
ステップ1 道具と材料を準備しましょう
苗づくりに必要なもの
- 3号ポット(直径9cmほどの小さなポット)
- 野菜用培養土
- Uピンか針金(子株を固定するため)
- じょうろ(やわらかい水流のもの)
ポットは小さいもので十分です。最初から大きなポットを使うと、土が多すぎて根腐れしやすくなります。培養土は市販の野菜用で問題ありません。
Uピンは園芸店で売っていますが、針金を曲げて自作することもできます。私の農園ではコスト削減のために針金を使っています。
ステップ2 子株をポットに固定します
ランナーの先に子株が出てきたら、3号ポットに土を入れて子株の位置に置きます。子株の葉が土の上に出るように、根もとだけが土に触れるよう調整します。
Uピンで子株をしっかりポットに固定します。この固定がしっかりできていないと、根が出る前に株が動いて失敗します。土に密着させることがポイントです。
固定はやりすぎくらいでちょうど良いです。しっかり押さえて動かないようにしましょう。
ステップ3 発根を確認してからランナーを切ります
固定してから1〜2週間ほどで発根します。発根したかどうかは、ポットをそっと持ち上げてみてわかります。根が張っていると、わずかに重さと抵抗を感じます。
発根が確認できたら、ランナーをはさみで切ります。切る場所は子株の近く(子株側)で切ります。親株側で切ると傷口が大きくなります。
発根前にランナーを切ると子株が枯れます。確認してから切る、この順番を守ることが大切です。
ステップ4 夏は涼しい場所で管理します
いちごの苗は高温に弱いです。30度を超える夏の直射日光が続くと、苗が弱ってしまいます。7月〜9月は明るい日陰か、可能であれば空調の効いた室内の窓際で管理するのが理想です。
私の農園では、簡易的な遮光ネット(遮光率40〜50%)を使って対応しています。家庭菜園では、よしずや寒冷紗でも代用できます。
夏の管理をていねいにした年の苗は、秋の植え付け後の成長が明らかに違います。
ステップ5 10月〜11月に畑やプランターへ植え付けます
苗が育ったら、気温が下がる10月〜11月に定植します。植え付けのコツは、クラウン(株元の部分)を土に埋めないことです。クラウンが土の中に入ると、腐ったり病気になったりします。
埼玉県吉見町の気候では、10月中旬〜11月上旬の植え付けが最もうまくいきます。最低気温が15度を下回るくらいが目安です。
「クラウンを土の上に出す」この一点を守るだけで、失敗のリスクが大きく下がります。
ランナー管理でよくある失敗と対処法
失敗① 子株が枯れてしまった
いちばん多い原因は、固定が甘くて根が出る前に株が動いてしまうことです。もう一つの原因は、夏の直射日光による高温障害です。どちらも事前の準備で防ぐことができます。
対策はしっかりとした固定と遮光です。特に7月〜8月は毎日の水やりと日よけ管理が欠かせません。
失敗② ランナーがなかなか出てこない
ランナーが出てこない場合は、親株が弱っている可能性があります。収穫後に液体肥料を薄めて与えると、親株が回復して元気なランナーが出やすくなります。
追肥のタイミングは収穫終了直後です。リン酸とカリウムが多めの肥料を選ぶと、根の発育と苗の充実を助けます。
収穫後の追肥は苗づくりの成功を大きく左右するポイントです。忘れずに行いましょう。
失敗③ 秋の植え付けがうまくいかない
植え付けが早すぎると、まだ暑くて株がうまく根づきません。遅すぎると、根が張る前に冬の寒さが来てしまいます。タイミングが大切です。
また、植え付け後に水切れが起きると苗が弱ります。植え付け直後は特に水やりに気をつけましょう。根が活着するまでの2〜3週間が正念場です。
まとめ:ランナーの「切る時期」と「伸ばす時期」を意識しよう
ランナー管理のポイントまとめ
- ✅ 収穫中はランナーをすべて切る(品質・収量を守るため)
- ✅ 収穫終了後(6月頃)からランナーを伸ばして苗づくり開始
- ✅ 孫株・ひ孫株が苗として最も優れている
- ✅ 子株は固定して発根を確認してからランナーを切る
- ✅ 夏は涼しい場所で管理し、10〜11月に植え付ける
いちごのランナー管理は、今年の収穫と来年の苗づくりの両方に直結する大切な作業です。「切る時期」と「伸ばす時期」をきちんと分けて管理することで、毎年安定して美味しいいちごを収穫できるようになります。
私の農園では、このサイクルを何年も繰り返してきました。家庭菜園でも同じ考え方で管理すれば、きっと良い結果が出ます。ぜひ試してみてください。
コメント