いちごを育てていると、ある日突然「葉が赤くなっている!」と気づいて焦ることがあります。私は埼玉県吉見町で丹羽いちご園を営んでいますが、毎年12月から5月の収穫シーズンにかけて葉の色には特に注意を払っています。
葉が赤くなる原因は大きく3つあります。①リン酸不足(肥料不足)、②低温・寒さによるストレス、③病害です。それぞれ対処法が異なるため、原因を正確に見極めることが大切です。この記事ではその見分け方と対処法を、農家としての経験も交えながら詳しく解説します。
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いちごの葉が赤くなる3つの原因
原因① リン酸不足(肥料不足)
葉が赤くなる原因として最も多いのがリン酸不足です。リン酸は植物の根の発達や開花・結実に欠かせない栄養素で、不足するとアントシアニンという赤い色素を大量に生成し、葉が赤や紫に変色します。
特に冬から春先(12月〜3月頃)は地温が低くなるため、土中のリン酸が溶け出しにくく、根が吸収しにくい状態になります。「冬だから葉が赤いのは仕方ない」と思っている方も多いですが、その多くはリン酸不足が関係しています。放置すると株全体の生育が遅れ、春の収量にも影響が出てきます。
【リン酸不足のサイン】葉の裏側から赤紫色になる・葉柄(葉の軸)が赤くなる・古い葉から症状が出やすい、という3点が特徴です。新葉はもともと色が薄いので惑わされないようにしましょう。
原因② 低温・寒さによるストレス
いちごは冬越しをする植物ですが、急激な気温低下や霜にさらされると、寒さへの防御反応としてアントシアニンを増やし、葉が赤みを帯びることがあります。これは肥料不足とは異なる現象で、気温が戻れば自然に緑色に回復することが多いです。
露地栽培や無加温ハウスでは12月〜2月が特に赤みが出やすい時期です。寒さによる赤みは株全体に均一に現れることが多く、特定の葉だけが変色する病気とは見た目が異なります。ビニールマルチや農業用不織布で地温を保つ工夫が有効です。
原因③ 病害(炭疽病・葉枯れ病など)
病気が原因で葉が赤や茶褐色に変色するケースもあります。代表的な病害は以下の通りです。
| 病名 | 症状の特徴 | 発生しやすい時期 |
|---|---|---|
| 炭疽病 | 黒〜赤褐色の斑点、株全体が萎れる | 春〜秋(高温多湿時) |
| 葉枯れ病 | 葉の縁から赤褐色に枯れ込む | 春先〜初夏 |
| うどんこ病 | 白い粉状の斑、葉が赤みを帯びることも | 春(3〜5月) |
病気の場合は葉の一部に斑点や枯れ込みが出ることが多く、栄養不足の場合は比較的均一な色変化が出やすいです。両方の可能性を頭に置いてよく観察してみてください。
原因別の対処法
リン酸不足への対処法
リン酸不足が疑われる場合は、リン酸を含む肥料を補給します。冬の低温時は固形肥料の効き目が遅いため、液体肥料(液肥)を葉面散布するのが効果的です。即効性があり、短時間で効果を確認できます。
私が日頃から実践しているのは、古い葉の色を定期的にチェックすることです。下の方の古い葉の色が薄くなり始めたら追肥のタイミングと判断して、リン酸系の液肥を施しています。葉の色は肥料の状態を教えてくれる「天然の肥料計」だと私は考えています。どの成分が足りないかも葉の色から読み取れるので、施肥の精度が上がります。
【対処のポイント】①リン酸入り液肥を規定倍率に薄めて1〜2週間に1回葉面散布する。②ビニールマルチで地温を上げてリン酸の吸収を促す。③土壌pHをチェックし、pH6.0〜6.5に調整する(酸性が強いとリン酸が固定されて吸収しにくくなる)。
低温・寒さへの対処法
寒さが原因の場合は保温対策が中心です。黒マルチシートで地温を保つ・農業用不織布で株を覆う・ハウス栽培では夜間の保温を徹底するなど、環境面からアプローチします。春になって気温が安定してくれば自然に回復することがほとんどですが、株が弱っているようなら追肥で体力を補ってあげましょう。
病害への対処法
病気が疑われる場合は早期発見・早期対処が鉄則です。
- 炭疽病:罹患した葉や株をすぐに除去し、農薬(ベンレート水和剤など)を散布する
- 葉枯れ病:病葉を取り除き風通しをよくする。必要なら殺菌剤を使用
- うどんこ病:適切な水やりと殺菌剤の散布で管理する
病気は広がるのが早いので「少し変だな」と感じたらすぐに対応することが大切です。特に炭疽病は感染力が強く、対処が遅れると畑全体に広がるリスクがあります。
プロ農家が教える葉の観察ポイント
私は埼玉県吉見町で長年いちごを栽培していますが、正直なところ自分の畑で葉が深刻に赤くなった経験はほとんどありません。毎日畑を歩いて葉の状態を細かく確認する習慣があるからだと思っています。問題は「気づいたとき」ではなく、「兆候が出始めたとき」に対処することが重要です。
【プロの観察の基本】新しく出てきた葉(新葉)は色が薄くても正常です。注目すべきは古い葉。下の方の古い葉の色が薄くなったり赤みを帯びてきたりしたら、それが栄養不足のサインです。新葉と古い葉を見比べる習慣をつけることが大切です。
葉の色を読むと、どの肥料成分が足りないかまでわかります。窒素が不足すると葉全体が黄緑色になり、リン酸が不足すると赤や紫みがかってきます。葉の観察が上手になると施肥の判断精度が上がり、無駄な肥料代の節約にもつながります。
| 確認ポイント | 健康な状態 | 注意が必要な状態 |
|---|---|---|
| 新葉の色 | 薄い緑(正常) | 黄白色・萎れ・枯れ込み |
| 古い葉の色 | 濃い緑 | 黄化・赤紫色への変色 |
| 葉の裏面 | 薄い緑 | 赤紫色(リン酸不足のサイン) |
| 葉の形・質感 | 張りがある | 縮れ・斑点・穴あき・萎れ |
よくある質問
Q. 新葉が赤っぽいのは問題ですか?
A. 新葉が薄い色をしているのは正常です。新しく出てきた葉は葉緑素がまだ少なく、色が薄かったり赤みを帯びたりすることがあります。成長とともに濃い緑色に変わっていくので心配不要です。問題なのは古い葉が赤くなってきた場合です。この点を誤解している方が多いので、「新葉と古い葉を見比べる」ことを意識してください。
Q. 赤くなった葉は取り除くべきですか?
A. 病気が原因の場合は感染拡大を防ぐために除去した方がよいです。ただし栄養不足や寒さが原因の場合は、まず根本的な原因を改善することが先決です。葉は光合成を行う大切な器官なので、必要以上に取り除かないようにしましょう。
Q. 肥料を与えすぎてもよくないですか?
A. 肥料の与えすぎは肥料焼けを引き起こし、葉が枯れたり根が傷んだりします。液肥を使う場合は必ず規定の倍率に薄めて使いましょう。焦って大量に与えるのは逆効果です。「薄めに複数回」が施肥の基本です。
おすすめ資材・商品
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まとめ
いちごの葉が赤くなる主な原因は、①リン酸不足、②低温・寒さによるストレス、③病害の3つです。それぞれ原因が異なるため、葉の状態をよく観察して見極めることが何より大切です。
私が長年の栽培経験から伝えたいのは「葉をよく見ること」の大切さです。新葉が薄い色をしているのは正常ですが、古い葉が赤みを帯びてきたら栄養不足のサインです。葉の色から肥料の状態を読めるようになると、いちご栽培が格段に上手になります。どの成分が足りないかまで葉から判断できるようになれば、施肥のタイミングを逃すことも少なくなるでしょう。
毎日少しだけ葉の観察に時間をかけることが、問題の早期発見と健全な株づくりへの近道です。ぜひ今日から「葉を見る」習慣をつけてみてください。

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