「ランナーが伸びてきたけど、切るべき?それとも放置してもいいの?」
4月に入ると、いちごの株元からひょろりと細い茎が伸び始めます。 はじめてのかたはもちろん、栽培に慣れてきた方でも、このランナーの扱いで毎年迷うという声をよく聞きます。
私は埼玉県吉見町で脱サラしていちご農家を始めて7年目になります。 栽培1年目、私が犯した最大の失敗がランナーの扱いでした。 「いちごを増やせるなら増やそう」と収穫最盛期にランナーを伸ばし続けた結果、その年の実は甘みが薄く、収量も例年の6割ほどに落ちました。 あの経験が、ランナー管理の大切さを骨身にしみて教えてくれました。
ランナーへの正しい対処は、「今が何の時期か」によって180度変わります。 この記事では、収穫期の管理から苗づくりまで、農家として実践してきた方法をわかりやすくお伝えします。 明日の朝から使える内容にしましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
[st_toc]いちごのランナーとは?放置するとどうなるのか
ランナーの基本的な仕組み
ランナーとは、いちごの株元から横に伸びる細長い茎のことです。 「ほふく茎」とも呼ばれ、先端に子株(こかぶ)が生まれます。 その子株からさらにランナーが伸びて孫株、ひ孫株と続いていきます。 いちごが自然に子孫を増やすための仕組みで、うまく活用すると翌年用の苗を無料でたくさん確保できます。
ただし、このランナーには大きな落とし穴があります。 収穫期にランナーを放置すると、実に届くはずの栄養がランナーに奪われ、甘みも収量も激減します。 便利な機能なのに、使い方を間違えると逆効果になるのがランナーの難しいところです。
収穫期のランナーが実に与えるダメージ
植物は光合成でつくったエネルギーを、実・葉・茎・根・新芽のすべてに分配します。 実がたくさんなっているときにランナーが伸びると、そのランナーにもエネルギーが分散されます。
私の農園では、ランナーを放置した株と週に一度切り取った株を並べて比較したことがあります。 2週間後に糖度計で実の甘さを測ると、ランナーを切り取った株のほうが糖度で1〜2度高く出ました。 たかが茎一本、と思うかもしれませんが、その積み重なりが1シーズンの収穫量と品質を左右します。
プランター栽培の場合は土の量が限られるため、地植えよりもランナーの影響が大きく出やすいです。 プランターでいちごを育てているなら、ランナー管理はとくに丁寧にやるべきです。
ランナー管理の最大の原則:時期によって対応が真逆になる
ランナーの扱いで混乱が起きる最大の理由は、「切る時期」と「伸ばす時期」が正反対だからです。 この原則を知らないまま「ランナーは切るもの」と思い込んでいると、苗づくりの時期に大切なランナーを全部切り落としてしまいます。 逆に「ランナーは増やすためのもの」と思い込んでいると、収穫期に放置して実を傷めます。
| 時期 | ランナーの対処 | 目的 |
|---|---|---|
| 3月〜6月(収穫期) | 見つけ次第カット | 実に栄養を集中させる |
| 6月〜8月(苗づくり期) | 伸ばして子株を育てる | 翌年用の苗を確保する |
| 9月以降(定植準備期) | ランナーを切り離す | 子株を独立させる |
この3つの時期を頭に入れておくだけで、ランナー管理の迷いの9割はなくなります。 「今は何の時期か」を意識することが、ランナー管理のすべてのスタート地点です。
ランナー管理でよくある3つの失敗
失敗① 収穫期にランナーを伸ばし続ける
「せっかく出てきたのだからもったいない」という気持ちはよくわかります。 でも、収穫中にランナーを伸ばすのは実の品質を下げるだけです。 3月〜6月の収穫期はランナーが出るたびにすぐカットが正解です。
理由はシンプルで、ランナーに栄養が流れてしまうためです。 実際に私が1年目に体験したように、ランナーを放置すると実の甘みと大きさが落ちます。 収穫が終わってからいくらでも苗を増やせるので、今の季節はまず実に集中させましょう。
週に一度、園内を見回ってランナーをカットするだけで十分です。 伸び始めて短いうちに切るほど、株へのストレスが少なく済みます。
失敗② 苗づくり期に第一子株を使う
収穫が終わって苗づくりを始めると、最初に出てくる「第一子株」を使いたくなります。 しかし、これは避けてください。 第一子株は親株に最も近く、ウイルス病を受け継ぎやすいという問題があります。
農業試験場のデータでも、第一子株は生育が不安定になりやすく、翌年の収穫に影響が出やすいことが示されています。 苗として使うのは、第二子株(孫株)か第三子株(ひ孫株)が理想です。 第一子株はポット上げせずにそのまま処分するのが、農家の基本的なルールです。
最初はもったいない気がしますが、質の低い苗を使うほうが翌シーズン全体のロスが大きくなります。 苗の選別こそが翌年の品質を決める、と心得ておきましょう。
失敗③ ランナーを根元から切りすぎる
「ランナーは切る」という知識だけが先行して、株元ギリギリから無理に切り取ってしまうケースがあります。 清潔なハサミで行ってもダメージが残ることがあるので注意が必要です。
正しい切り位置は株元から1〜2cmほど上です。 完全にゼロで切り込むと、株のクラウン部分を傷つける可能性があります。 クラウンはいちごの生長点で、ここを傷めると株全体が弱ります。 少しだけ茎を残して切ることが、株へのダメージを最小限にするコツです。
私が農園で実践しているランナー管理の具体的方法
収穫期(3月〜6月)の管理手順
収穫期のランナー管理はシンプルです。週に一度、株を見回ってランナーが出ていたら切る、これだけです。
私の農園では毎週土曜日を「管理デー」にしています。 ランナーのカットと同時に、古くなった葉(黄色くなった下葉)や花がらも取り除きます。 この「セット管理」を習慣にすると、株が常に健康な状態を保てます。
使う道具はよく切れる園芸ハサミです。 使い始める前に、ハサミの刃をアルコールで拭いておくことを忘れないでください。 ハサミを介して炭疽病などの病気が株から株に広がることがあるためです。 10株ごとに消毒する習慣をつけておくと安心です。
切ったランナーは株元に放置せず、すぐに袋に入れて捨てましょう。 土の上で腐らせると、病原菌の温床になることがあります。
苗づくり期(6月〜8月)の管理手順
6月ごろに収穫がひと段落したら、ランナーを切るのをやめます。 代わりに、伸びてきたランナーの先の子株をポット(9〜12cmサイズ)に誘引します。
手順はこうです。 まずポットに培養土を入れ、子株のクラウン(根元の白い部分)が土に触れるよう置きます。 次にU字型のピンや針金でランナーをポットに固定します。 その後は毎日水やりを続け、2〜3週間で根が出てきます。
ランナーを切るのは根が出てからさらに2週間ほど待ち、葉が4〜5枚になって株がグラグラしなくなってからです。 焦って早くランナーを切ると、子株が枯れてしまいます。じっくり待つのが正解です。
ポット上げのときにひとつ豆知識を。 子株を誘引する方向は、親株のクラウン(中心)から伸びているランナーの方向に合わせると、根の張り方が安定します。 この向きを意識して定植すると、翌年の生育がよくなります。
良い子株の見極め方
すべての子株が良い苗になるわけではありません。 翌年の収穫を左右するのは、この選別の丁寧さです。 以下のチェックポイントを参考にしてください。
- 第二子株(孫株)か第三子株(ひ孫株)であること
- 葉の色が濃い緑で、黄ばみや斑点がない
- クラウンが太くしっかりしている(直径8mm以上が理想)
- 葉が3〜5枚ついていて、新しい葉が次々と出てきている
- ランナーの切り口に黒い変色がない(炭疽病の疑いがあるため)
迷ったときは「クラウンの太さ」を優先してください。 クラウンが細い株は翌年の花芽分化が少なく、収量が落ちやすいです。 良い苗を選ぶことに時間をかけるほど、翌シーズンの収穫が豊かになります。
今週からできる!ランナー管理の実践チェックリスト
4月の今は収穫の最盛期です。まずは以下の管理を週一ペースで実践してみてください。
| やること | 頻度 | ポイント |
|---|---|---|
| ランナーをカット | 週1回 | 株元から1〜2cm残す・ハサミを消毒 |
| 古い下葉・花がらを除去 | 週1回 | ランナーカットと同時に行う |
| クラウンの状態確認 | 週1回 | 土に埋まっていたら掘り起こす |
| 病気チェック | 毎作業時 | 葉に白い粉や黒い斑点がないか確認 |
| 肥料の確認 | 月2回 | 追肥は控えめ・窒素過多に注意 |
週に30〜40分のこまめな管理が、1シーズンの収穫量を大きく変えます。 難しいことは何もないので、まずは今週末の管理から始めてみてください。
プランター栽培のかたは、ランナーをカットするたびにクラウンが土の上にきちんと出ているかも確認してみてください。 クラウンが土に埋まると生育が悪くなるため、株元の土が盛り上がっていたら少し取り除いて調整します。
まとめ
- 収穫期(3〜6月)は、ランナーを見つけ次第カットして実に栄養を集中させる
- 苗づくり期(6〜8月)は、ランナーを伸ばして第二・第三子株を育てる
- 苗は第一子株を避け、第二子株(孫株)・第三子株(ひ孫株)を選ぶ
- カットは株元から1〜2cm残して行い、ハサミは必ず消毒する
- ランナーを切るのは、葉が4〜5枚・株がしっかり安定してから
ランナーの管理は、慣れてしまえばそれほど手間はかかりません。 大切なのは「今が何の時期か」を意識して、その時期に合った対応をすることです。
私も最初の年はランナーの扱いで大失敗しましたが、今では管理デーの30分でスムーズにこなせるようになりました。 焦らず、一つひとつ丁寧に続けていきましょう。
いちごの追肥や施肥の方法については、こちらの記事でくわしく解説しています。ランナー管理と並行して肥料の知識もぜひ身につけてみてください。
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