「せっかく花が咲いたのに、実がいびつになってしまった…」
4月に入ってイチゴの花が咲きはじめると、こんな悩みを抱える方がぐっと増えます。小さくてゆがんだ実、なかなか大きくならない実、そもそも実がつかない花。どれも「どうして?」と不安になりますよね。
私は埼玉県吉見町でいちごの農園を営んでいます。毎年この季節になると、訪れてくださるお客様や読者のみなさんから「奇形果になってしまった」「実がならない」というご相談をたくさんいただきます。
実は4月の奇形果や結実不良には、ほぼ共通した「3つの原因」があります。原因がわかれば対策はシンプルです。この記事では、プロ農家の視点から原因と今日からできる解決策をわかりやすくお伝えします。
4月のいちごに奇形果が出やすい、本当の理由
まず大切なことをお伝えします。4月に奇形果が出るのは、あなたの育て方が悪かったわけではありません。
奇形果の多くは「受粉の不完全さ」が原因です。いちごの実は、花の中心にある「めしべ」がひとつひとつ受粉することで大きくなります。このめしべの受粉が均一でないと、実がいびつになってしまうのです。
「奇形果は受粉失敗のサイン」と覚えておいてください。
4月の初旬はまだ気温が低く、ミツバチなどの受粉を助けてくれる虫が少ない時期です。プランター栽培ではとくに虫が来にくい環境になっています。私の農園でも、4月の第1週に咲いた花は奇形果になりやすく、気温が安定してくる4月下旬からは品質がぐっとよくなります。これは毎年のことなので、「4月前半は要注意」と管理スケジュールに組み込んでいます。
奇形果・結実不良の3大原因
原因①:人工授粉が不十分
いちごの花は開花から2〜3日以内に受粉しないと、実になりません。しかも、1回だけでは足りません。
私が農園でやっているのは「開花当日から3日間、毎日人工授粉する」方法です。やわらかい筆や綿棒を使って、花の中心をくるくるとやさしくなでます。花全体のめしべに満遍なくふれることが大切です。
「1回の受粉では、形のいいいちごは作れない」というのが農家の常識です。
よくある失敗は「開花当日だけ受粉して終わり」にしてしまうことです。開花翌日・翌々日も忘れずに行いましょう。天気の悪い日や気温の低い日は、とくに念入りに行うと効果的です。
原因②:気温が低すぎる
いちごの受粉がうまくいくのは、気温が15〜25℃のときです。これより低い日が続くと、花粉の活性が下がり、受粉しにくくなります。
4月の上旬は、最低気温が5℃前後になる日もあります。こういった日に咲いた花は受粉が成功しにくく、奇形果になりやすいのです。
「寒い日に咲いた花ほど、丁寧な人工授粉が必要」というのが経験則です。
対策としては、気温が低い日はプランターを日当たりのよい場所に移動させたり、夜間は軒下やベランダの内側に避難させたりすると効果的です。地植えの場合は、不織布でトンネル掛けするのもいい方法です。
原因③:肥料の与えすぎ(窒素過多)
「しっかり育てたい」と肥料を多めに与えていませんか?じつはこれが結実不良の原因になることがあります。
窒素が多すぎると、葉や茎ばかりがどんどん育ち(これを「過繁茂」といいます)、肝心の花や実がつきにくくなります。葉が大きく濃い緑色で、なんとなく元気に見えるのに実がならない、という場合はこれが疑われます。
「葉が元気なのに実がない、は肥料の与えすぎサインです」。
4月以降は追肥を控えめにするか、完全にやめることをおすすめします。私の農園では3月末を最後の追肥のタイミングにしています。もし肥料を与えるなら、窒素を減らしてリン酸・カリウム主体のものに切り替えましょう。
今日からできる具体的なアクション
✅ 今週中にやること3つ
- 開花している花を確認し、今日から毎日人工授粉を行う(朝10〜14時が最適)
- プランターを一番日当たりのよい場所に移動する
- 4月以降の追肥をストップする(または量を半分以下に減らす)
人工授粉の正しいやり方
筆か綿棒を使って、花の中心(黄色い部分)をやさしくくるくると回します。力を入れなくて大丈夫です。1つの花に10〜15秒かけてゆっくりなでるイメージです。
授粉に最適な時間帯は午前10時〜午後2時ごろ。気温が上がって花粉が活発になる時間帯です。曇りや雨の日でも授粉は行えますが、晴れた日のほうが効果的です。
「毎朝5分のひと手間が、形のいいいちごを作る一番の近道」です。
ランナーはすぐに取り除く
4月になるとランナー(ひげのような茎)が次々と伸びてきます。これを放置すると、せっかくの栄養が全部そちらに取られてしまいます。
実がついている時期のランナーは、見つけたらすぐにハサミで切りましょう。「実を取るか、ランナーを残すか」は二択です。今は実を優先する時期です。
よくある質問(Q&A)
| 質問 | 答え |
|---|---|
| 奇形果は食べられる? | 食べられます。味は多少落ちることもありますが、体への問題はありません |
| 一度奇形になった実は直る? | 直りません。その実は諦めて、次の花に注力しましょう |
| 室内で育てると受粉できない? | 室内は虫が来ないので人工授粉が必須です。窓を開けても虫は来にくいです |
| 奇形果になりにくい品種は? | 「とちおとめ」「よつぼし」は花粉が多く、比較的奇形果が出にくいとされています |
まとめ:4月のいちご管理は「受粉」が8割
4月の奇形果・結実不良の原因はほぼ3つに絞られます。
- 人工授粉が不十分(1回だけ・丁寧さが足りない)
- 気温が低く受粉環境が悪い
- 窒素過多で花・実がつきにくい状態になっている
どれも今日から対策できることばかりです。毎朝5分、丁寧に人工授粉をするだけで、実のつき方がぐっと変わります。私の農園でも、人工授粉を丁寧に行うようにしてから奇形果の割合が大きく減りました。焦らず、毎日続けることが大切です。
「毎日の5分が、美味しいいちごへの一番の近道です」。
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