脱サラして農家になる手順と準備|実体験をもとに解説

「会社を辞めて農家になりたい」――そう思ったとき、何から始めればいいか分からず立ち止まってしまう人は多いと思います。私も同じでした。農業イベントに参加したことをきっかけに脱サラを決意し、群馬や埼玉での雇用就農を経て、今は埼玉県吉見町でいちご農家として働いています。この記事では、私の実体験をもとに、脱サラして農家になるための手順と準備をできるだけわかりやすく解説します。お金のこと、土地のこと、制度のこと――知っておきたいポイントをまとめました。

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目次

農業イベントで人生が変わった

農業への興味は、ふらっと参加した農業イベントがきっかけでした。

当時の私はサラリーマンをしていました。農業に特別な縁があったわけでもなく、「いつか自分で何か作ってみたい」というぼんやりとした気持ちだけがありました。そんなとき、偶然参加した農業イベントで実際に農家さんの話を聞く機会がありました。

土に触れた感触、農家さんたちの生き生きとした表情、「自分で作ったものが食卓に届く」という話――何かが心に刺さりました。帰り道、「これをやってみたい」という気持ちが消えなかったんです。農業へのハードルは高く感じていましたが、「まず知ることから」と思い直し、そこから少しずつ動き始めました。

まずは農業を「体験する」ことが最初の一歩

農業を始める前に、実際の農作業を体験することが大切です。

農業イベントや体験農園、農業ボランティアなど、今は農業を体験できる機会が増えています。「想像していたのと違った」という人も多いので、本格的に動き出す前にまず体験してみることをおすすめします。現場の空気を感じることで、「本当に続けられるか」を判断する材料になります。

農業体験イベントや農場見学に参加してみましょう。「向いているかどうか」を体で確かめることが、後悔しない第一歩につながります。まず動いてみることで、次のステップが見えてきます。

雇用就農から独立まで――私が歩んだ道のり

いきなり独立するのではなく、まず「農家に雇ってもらう」雇用就農という方法があります。

農業の知識がほぼゼロの状態で独立するのはリスクが高すぎると判断し、私はまず農家に雇ってもらうことから始めました。実際に農業の現場で働きながら技術と経験を積む、この段階をしっかり踏んだことが今につながっていると感じています。

群馬での有機米、埼玉での米とネギ栽培

最初の雇用就農先は群馬県で、農薬や化学肥料を使わない有機米の栽培を学びました。

有機栽培は通常の栽培より手間がかかります。土づくりの大切さや、農業の厳しさを体で覚えたのはこの時期でした。その後、埼玉県行田市に移り、米とネギの栽培に携わりました。作物が変われば栽培方法も管理のコツも変わります。複数の作物を経験できたことは、今でも役に立っています。行田では後にいちご農家としての研修も受けることになり、現在の吉見町での経営につながっていきました。

夜勤トラックドライバーとの兼業という現実

行田での就農期間中、生活費を補うために夜勤のトラックドライバーを掛け持ちしていました。

農業の収入だけでは生活が苦しい時期がありました。夜中にトラックを運転して、昼間は農作業――正直、体力的にはきつかったです。でもこの経験があったからこそ、「お金の準備をしっかりしておくこと」の大切さを身に染みて感じました。

脱サラして農家を目指す方に必ず伝えていることがあります。「農業収入だけで生活できるようになるまでには時間がかかります。その間の生活費をどう確保するか、先に考えておいてほしい」ということです。

雇用就農中は収入が低くなることが多く、副業や貯金で補う必要があるケースも少なくありません。独立前の「生活防衛資金」として、最低でも1年分の生活費を目安に準備しておくと安心です。

脱サラ農家になるための具体的な手順

農家になる道筋は人それぞれですが、おおまかな手順を整理しておくことが大切です。

私が実際に経験した流れをもとに、参考になりそうなステップをまとめます。あくまで一例ですが、全体の流れをつかむのに役立ててください。

ステップ 内容
① 情報収集・体験 農業イベント・農場見学・体験就農に参加する
② 相談窓口に行く 農林振興センターや農業委員会に相談する
③ 雇用就農で経験を積む 農家に雇ってもらい、現場で技術を学ぶ
④ 研修・担い手塾に参加 公的な研修制度を活用してスキルアップする
⑤ 農地・資金の確保 農地を探し、補助金や融資の申請準備をする
⑥ 独立・経営開始 認定新規就農者の認定を受けて農業経営をスタート

まず農林振興センターに相談する

何から始めればいいか迷ったら、農林振興センターへの相談が一番の近道です。

農林振興センターは、都道府県が設置している農業の相談窓口です。新規就農を考えている人向けに、農地の探し方・研修制度・補助金の情報など、幅広い相談に無料で対応してくれます。私もここに相談したことで、知らなかった制度や支援策を教えてもらえました。「農業のことをよく知らないから行きにくい」と思う必要はありません。むしろ、知識がないうちに行って「何から始めればいいですか?」と聞くのが正解です。

担い手塾や研修制度を積極的に活用する

私は「明日の農業担い手塾」に参加し、農業経営の基礎を体系的に学びました。

「明日の農業担い手塾」は、埼玉県が実施している新規就農者向けの研修プログラムです。農業技術だけでなく、経営の考え方や農地の取得方法など、独立後に必要な知識を総合的に学べます。同じ目標を持つ仲間とのつながりができたことも、大きな財産になりました。各都道府県にこのような研修プログラムがありますので、お住まいの地域で探してみてください。

農林振興センターや農業委員会は、新規就農者の強い味方です。補助金の申請方法から農地の探し方まで、一人で抱え込まずに積極的に相談することをおすすめします。「知らなかった」で損をしないためにも、早めに動くことが大切です。

補助金と資金準備――知らないと損する制度

新規就農には活用できる補助金制度があり、私も「経営開始型」の補助金を活用しました。

農業を始めるにはお金がかかります。農機具・農地の賃借・資材費など、初期投資は思ったより大きくなることが多いです。私自身、この部分の準備が不十分だったと後悔した場面がありました。

経営開始型の新規就農補助金とは

「農業次世代人材投資資金(経営開始型)」は、独立就農後の生活費を補助してくれる制度です。

この補助金は、独立して農業経営を開始した新規就農者を対象に、年間最大150万円(夫婦の場合は最大225万円)が最長3年間支給されます(※金額・期間は変更される場合があります)。経営が軌道に乗るまでの間、生活費の一部をカバーしてくれるありがたい制度です。申請には年齢要件(49歳以下)や経営計画の策定、認定新規就農者の認定取得などが必要です。農林振興センターや市町村の農業担当窓口で最新の要件を確認してください。

資金計画は「甘め」に見積もらない

初期費用と生活費は、想定よりも多めに見積もっておくことが重要です。

農業を始めてみると、想定外の出費が重なることが多いです。機械の修理費、天候不順による収量減、農地の整備費用……。私もいくつかの想定外を経験しました。「余裕を持って資金を確保しておく」という感覚が大切です。

項目 目安(一例) 備考
農機具・設備費 100〜500万円以上 品目・規模によって大きく異なる
農地の賃借料 数万〜数十万円/年 地域差が大きい
生活費(1年分) 200〜300万円 補助金でカバーできる部分もあり
資材・種苗費 数十万円〜 作物・作付け面積による

補助金は「もらえれば助かる」というスタンスで申請し、補助金なしでも最低限やっていける資金計画を立てておくことが安心です。補助金の申請条件・金額は変わることがあるため、必ず最新情報を窓口で確認してください。

土地と人脈――農家として長く続けるための土台

農業を続けていくうえで、農地の確保と信頼できる人とのつながりは欠かせません。

お金と並んで、「土地」と「人」が農家の基盤になります。私が今こうして吉見町でいちごを作れているのも、多くの方に助けていただいたおかげだと感じています。

農地を確保するための動き方

農地は「待っていれば出てくる」ものではなく、自分から動いて探すものです。

農地の探し方には、農業委員会への相談、農地バンク(農地中間管理機構)の活用、地元農家さんとのつながりから紹介してもらうなど、いくつかの方法があります。地域によって農地の空き状況は大きく異なります。私の場合、吉見町でいちごの研修を受けながら、少しずつ農地の情報を集めていきました。「ここで農業をやっていきたい」という意思を地域の方に伝え続けることが、農地につながる近道だと思います。

一人では難しい――人に頼ることが農業を続けるコツ

農業は一人で完結できることは少なく、周囲の人に助けてもらいながら続けていくものです。

これは私が経験の中で一番強く感じていることです。農地を貸してくれた方、農業技術を教えてくれた先輩農家さん、補助金申請を手伝ってくれた窓口の担当者さん、研修先のいちご農家さん――多くの方の力を借りて、今の自分があります。

「迷惑をかけたくない」「一人でやらなきゃ」と思う気持ちはわかりますが、農業の世界では「助けてもらうこと」は当たり前のことです。むしろ、どれだけ周囲を巻き込めるか、良い関係を築けるかが、長く農業を続けるカギになると感じています。

研修仲間、先輩農家、農協、行政の担当者――農業を取り巻く人間関係を大切にすることが、長続きする農業経営につながります。困ったときに頼れる人を増やしておくことが、何よりの備えになります。

まとめ

脱サラして農家になるのは、決して簡単ではありません。でも、手順を踏んで準備を整えていけば、道は開けます。私が特に大切だと感じているポイントをまとめます。

  • まずは農業を「体験」して、自分に合っているか確かめる
  • 農林振興センターや農業委員会に早めに相談する
  • 雇用就農や研修制度を活用して経験を積む
  • 補助金・資金計画は余裕を持って準備する
  • 農地確保と人脈づくりを地道に続ける
  • 一人で抱え込まず、いろんな人に頼る

私自身、農業イベントへの参加から始まり、雇用就農・担い手塾・補助金活用と少しずつステップを踏んできました。最初は「本当にできるのか」と不安だらけでしたが、周囲の方に助けてもらいながら今に至っています。

もし「農家になりたいけど、どこから動けばいいか分からない」という方がいれば、まず農林振興センターに足を運んでみてください。きっと次の一歩が見えてくるはずです。

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