いちごを育てていると、「いつ葉を取ればいいの?」「何枚くらい取ったらいいの?」と迷ったことはありませんか?私は埼玉県吉見町でいちごを栽培している農家です。摘葉(てきよう)とは、古くなった葉や傷んだ葉を手で取り除く管理作業のことで、いちごの収量や品質に大きく影響する大切な作業のひとつです。
正直に言うと、私も最初はうまくできませんでした。一度はがんばりすぎて葉を取りすぎてしまい、その後の生育が一時的に鈍くなってしまったことがあります。反対に、取るのが怖くてほとんど手を付けなかった年には、果実の甘みが落ちてハダニが大量発生するという苦い経験もしました。こうした失敗を乗り越えてたどり着いた「摘葉のタイミングと正しい方法」を、この記事ではわかりやすくお伝えします。
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摘葉とはどんな作業?いちご栽培で欠かせない理由
摘葉とは古い葉・傷んだ葉・病気の葉を取り除く作業で、残った葉に光と栄養を集中させることが目的です。
植物の葉は光合成をして、株全体のエネルギーを作り出しています。ただし、葉であれば何でもいいわけではなく、古くなった葉や色が薄くなった葉は光合成の効率がぐっと落ちています。それでも株はそういった葉を維持するためにエネルギーを使い続けます。取り除くことで、株のエネルギーを元気な葉と果実の充実に集中させることができます。
葉を放置するとどうなるのか
葉が増えすぎると日当たりが悪くなり、病害虫が発生しやすい環境になります。
いちごの株が茂りすぎると、葉と葉が重なり合って株の内部まで光が届かなくなります。日が当たらない場所は蒸れやすく、病原菌やハダニなどの害虫にとって都合のよい環境になってしまいます。私が経験したハダニの大発生も、葉が密になりすぎた環境が引き金でした。日当たりと風通しを確保することが、病害虫を防ぐ基本中の基本です。
摘葉の主な目的
・日当たり・風通しの改善
・病害虫の予防・拡大防止
・株のエネルギーを実に集中させる
・果実の甘みや品質の向上
取り時のサインと季節ごとのタイミング
摘葉のタイミングは「葉の色と状態」を目安にするのが基本で、定期的に株を観察する習慣をつけることが大切です。
取るべき葉の見分け方
黄色くなった葉・茶色く枯れ始めた葉・斑点が出ている葉が、摘葉のサインです。
健康ないちごの葉は濃い緑色をしています。葉の色が薄くなったり、黄色みがかってきたりしたら老化が始まっているサインです。こうした葉は光合成の効率が大きく落ちているので、早めに取り除く方がよいでしょう。
斑点や病気の症状が出ている葉も、放置すると周囲の葉に広がる可能性があります。「まだ完全には枯れていないから」と残しておきたくなる気持ちはわかりますが、病気の葉は早期に除去する方が株全体のためになります。取り除いた葉はほ場の外に持ち出し、適切に処分してください。
季節別の摘葉の目安
いちごの摘葉は植え付け後から収穫後まで継続的に行うもので、時期ごとにポイントが異なります。
| 時期 | 摘葉のポイント |
|---|---|
| 植え付け直後(9〜10月) | 古い葉・傷んだ葉を取り除き、新葉が出やすい環境を整える |
| 冬(休眠期:12〜1月) | 枯れ葉・傷み葉を中心に。まだ生きている葉は残す |
| 春(花芽が出るころ:2〜3月) | 最も重要な時期。下葉の整理で光と通気を確保する |
| 収穫後(5〜6月) | 古い葉・ランナーを整理して株を回復させる |
特に春の花芽が出る時期は、摘葉がいちごの品質に直結しやすい大切な時期です。焦らず、週1〜2回のペースで株の状態を確認しながら進めるのがポイントです。
正しい摘葉の手順|根本から取るのが基本
摘葉は葉を途中で切るのではなく、葉の付け根(葉柄の根本)からしっかり取り除くのが正しいやり方です。
葉の取り方と使う道具
手で引き抜くか、消毒済みのハサミで付け根ギリギリのところを切ります。途中で残すと、そこから腐敗や病気が広がることがあります。
葉を取るときは、葉柄(葉のつく茎の部分)の付け根をしっかりと持ち、株を傷めないよう引き抜くか、ハサミで付け根ギリギリを切ります。途中でちぎれて根元が残った場合、そこから腐敗が始まったり病原菌が入り込む原因になりますので注意してください。
病気が疑われる葉をハサミで切る場合は、1株ごとにハサミをアルコールで消毒することをおすすめします。手や道具を介して病気が他の株に広がるのを防ぐためです。取り除いた葉はその場に置かず、必ずほ場の外に持ち出して処分してください。
何枚残す?太陽への表面積が判断のカギ
私が基準にしているのは「太陽に向かう葉の表面積」。上から見たとき、葉が重なり合わず株全体に光が届く状態が目標です。
「何枚残せばいいですか?」という質問をよく受けますが、正直なところ、品種や株の大きさ・時期によって変わるため、一律に「○枚」とは言いにくいです。それよりも「全体に光が当たっているか」という視点で判断する方が、現場では使いやすいと感じています。
上から株を見たとき、葉が重なり合っている部分が多い場合は、少し減らすことを検討しましょう。逆に葉がスカスカに見えるなら、それ以上は取らないようにします。目安として、多くの品種では1株あたり5〜10枚程度の葉が残っている状態が一般的ですが、あくまで参考として、実際の株の状態を見ながら判断してください。
摘葉量の判断チェックリスト
・上から見て葉が重なり合っていないか?
・株の中心部(クラウン付近)まで光が届いているか?
・葉が小さい冬の時期は多めに残しているか?
・黄色い葉・傷んだ葉はしっかり除去できているか?
失敗から学んだ「バランス」の重要性
摘葉は「しっかりやれば必ずよくなる」というものではなく、取りすぎても取らなさすぎても問題が起きます。
取りすぎた年の失敗談|生育が止まったように見えた
葉を一度に取りすぎると光合成が不足し、株の成長が一時的に鈍くなります。
数年前のことです。「葉が多いと風通しが悪い」という考えが頭に強くあって、一度にかなりの量の葉を取り除いてしまいました。その後の2〜3週間、株の様子がどうもおかしい。新葉の展開が遅くなり、全体的に元気がなくなってしまいました。「もしかして枯れてしまうかも」と焦ったほどです。
葉は光合成をして株にエネルギーを供給する器官です。それを一度にたくさん取り除くと、株が栄養を作る力を一時的に失い、成長が止まったように見えることがあります。特に春先の生育が旺盛な時期に急激に葉を減らすと、回復に時間がかかります。「少しずつ、段階的に」が基本です。
取らなさすぎた年の失敗談|味が薄くなりハダニも大発生
葉を放置して密度が高くなると、果実の品質低下と病害虫発生のリスクが一気に高まります。
また別の年には逆の失敗をしました。「取りすぎるのが怖い」という気持ちから、摘葉をほとんどしなかった年がありました。すると株が茂りすぎてしまい、葉が重なり合って内部まで光が届かない状態に。果実は大きくなるのですが甘みが薄く、収穫してみてがっかりするものが多かったです。
さらに困ったのは、ハダニの大発生でした。葉の裏に白い細かい点が広がり、葉全体がかすれたように白っぽくなってしまいました。ハダニは高温乾燥で蒸れた環境を好みます。葉が密集して風通しが悪くなった株の状態は、まさにハダニが好む条件を満たしていたわけです。
あの年の経験で「取らなければ安全」という考えが間違いだと、身をもって学びました。取りすぎも取らなさすぎも問題。バランスが何より大切です。
初心者によくある疑問Q&A
摘葉を始めようとする方からよく聞かれる疑問をまとめました。
Q. ハサミと手、どちらで取ればいい?
どちらでも構いませんが、病気の葉を扱う場合はハサミを使い、その都度消毒するのが安全です。
手で引き抜く場合は、葉柄の付け根をしっかり持って、株を傷めないようにゆっくり引き抜きます。健康な葉の整理なら手でも十分対応できます。ただし、病気が疑われる葉を処理するときはハサミを使い、1株ごとにアルコール消毒をするようにしましょう。手や道具を通じて病気が広がるリスクを下げるためです。
Q. ランナー(つる)も一緒に取った方がいい?
収穫期はランナーも積極的に取り除きましょう。株の栄養が分散するのを防ぐことができます。
ランナーとは、株の横からにょきにょきと伸びてくる細い茎のことで、その先に子株ができます。苗を増やしたい場合はランナーを伸ばしますが、果実の品質を優先したい収穫期には取り除くのが基本です。ランナーが伸びると、株が実に使うはずのエネルギーがそちらに流れてしまい、果実が小さくなったり甘みが落ちたりすることがあります。摘葉と同じタイミングでランナーの確認もセットで行うと効率的です。
まとめ
いちごの摘葉は、適切なタイミングで・適切な量を取ることが大切です。最後に要点を整理します。
- 摘葉の目的は日当たり・風通しの改善と株のエネルギー集中
- 黄色い葉・傷んだ葉・病気の葉が取るべきサイン
- 葉柄の付け根からしっかり取り除く。途中で残さない
- 「上から見て光が全体に届いているか」を枚数判断の基準にする
- 取りすぎると生育が一時的に鈍くなり、取らなさすぎると病害虫が発生する
私の経験から言えることは、取りすぎも取らなさすぎも、どちらも問題が起きるということです。「光がちゃんと届いているか」を基準に、株の状態を見ながら少しずつ調整していくのが、現実的で無理のないやり方だと感じています。最初はうまくいかなくても、シーズンを重ねるごとに感覚がつかめてきます。焦らず、観察を続けながら取り組んでみてください。

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